アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎皮質から分泌されるホルモンが不足する病気で、犬ではまれに発生します。
副腎は腎臓の近くに左右1つずつある臓器で、生命の維持にかかわるさまざまなホルモンを分泌しています。
完全に治すことは難しいものの、きちんと投薬を続けてホルモンをコントロールすることで、アジソン病であっても健康な犬と変わらずに長生きすることができるでしょう。
多くは特発性(原因不明)に副腎皮質が小さくなってしまうことにより起こります。
他にも、腫瘍の転移や感染症、出血、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の治療薬が原因で副腎が障害を受けることもあります。
また、脳下垂体からは副腎でのホルモンの産生を促すホルモンが分泌されているため、下垂体の腫瘍や炎症、感染なども本病の原因になり得ます。
犬では平均発症年齢は約4歳で、特にメスで多いと言われています。
はじめのうちは元気がない、寝る時間が増えた、食べないなど、軽度な症状しか見られませんが、進行すると、脈が遅くなる(徐脈)、震え、体温の低下などが見られるようになります。
これらの症状はアジソン病に特徴的な症状ではないため、症状からすぐにアジソン病と特定することはできません。
さらに進行すると、突発的なショック症状に陥り、虚脱や意識消失、痙攣などを起こすことがあります。
これをアジソンクリーゼと呼びますが、この状態は危険で、緊急に治療を行う必要があります。
問診、症状、血液検査の結果からアジソン病が疑われた場合は、ACTH刺激試験というホルモン検査を行います。
ACTH刺激試験は、副腎からのコルチゾールの分泌を促すホルモンを投与して、前後のコルチゾール濃度を調べる検査です。
不足しているホルモンを注射や内服で補います。
完治する病気ではないため、治療は長期にわたります。
また、過剰に投与すると副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の原因となるため、ホルモン剤の量の調節は重要で、定期的なホルモン検査も必要です。
ほとんどが特発性のため、予防法はありません。
徐々に進行する病気で、初期には見つけにくい病気ですが、定期健診は早期発見に役立つでしょう。
アジソンクリーゼになると命の危険がありますので、少しでも疑われる場合は早めに受診してください。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)についてはこちらのページでも解説しています
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<参考文献>
Pedro J Guzmán Ramos, Michael Bennaim, Robert E Shiel, Carmel T Mooney. Diagnosis of canine spontaneous hypoadrenocorticism. Canine Med Genet. 2022 May 3;9(1):6.
Patty Lathan, Ann L Thompson. Management of hypoadrenocorticism (Addison’s disease) in dogs. Vet Med (Auckl). 2018 Feb 9;9:1-10.