犬や猫の肛門の左右には肛門嚢という袋があり、肛門腺で作られた分泌物がためられています。
肛門嚢炎はこの肛門嚢に起きた炎症のことで、発症した犬や猫ではお尻を床や壁、飼い主さんの足に擦り付ける、お尻を気にして舐める、噛むなどの行動の変化が見られます。
肛門嚢内に分泌物が過度に溜まり続けることも原因になるため、定期的な肛門腺のお手入れは肛門嚢炎の予防につながるでしょう。
目次
1.原因|溜まりすぎた肛門腺が粘膜を刺激。細菌感染を起こす
2.症状|お尻を気にする、床などに擦り付ける。肛門周囲から膿や血が出る
3.診断|症状や肛門嚢の分泌物の溜まり具体を観察
4.治療|抗菌剤や抗炎症剤の投与と患部を清潔に保つ
5.予防|肛門嚢内に分泌物が溜まりやすい犬猫は定期的なお手入れを
肛門嚢に溜まった分泌物は、通常であれば興奮した時や排便時などに自然に排出されます。
分泌物の排出のされやすさには個体差があり、特にお手入れしなくても問題ない犬や猫もいれば、うまく排泄されずに溜まりすぎてしまう犬や猫もいます。
分泌物が溜まりすぎた肛門嚢は粘膜を刺激し、さらに細菌に感染すると炎症を起こして肛門嚢炎が発生します。
肛門嚢に分泌物が溜まりすぎていると、痒みや違和感が出るため、肛門まわりを舐める、噛む、お尻を飼い主さんの足や床、壁に擦り付けるなどの行動の変化が見られます。
また、肛門付近から膿が混じった血が出ることもあります。
進行すると溜まりすぎた分泌物によって肛門嚢が破裂します。
肛門嚢炎は、その症状や肛門嚢の分泌物の溜まり具体から、比較的簡単に診断できます。
溜まりすぎた肛門嚢の分泌物を手で絞ったり管を使ったりして排泄し、周囲を洗浄して清潔な状態にします。
細菌感染に対しては、抗菌薬の内服や注射、軟膏などで治療をします。
症状によっては、抗炎症剤を使用することもあります。
これらの治療に反応せず、再発してしまう場合は外科手術によって肛門嚢を切除する場合もあります。
当院でも外科手術(肛門嚢摘出)の対応は可能ですので、手術について詳細に知りたい方は、当院までご相談ください。
※手術中の画像が掲載されておりますので、ご注意ください
定期的に肛門腺を絞り、肛門嚢内に分泌物が溜まりすぎないようにしてあげると良いでしょう。分泌物はかなり臭うため、シャンプー前がおすすめです。
当院でも処置できますので、いつでもご相談ください。
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<参考文献>
Annette Lundberg, Sandra N Koch, Sheila M F Torres. Local treatment for canine anal sacculitis: A retrospective study of 33 dogs. Vet Dermatol. 2022 Oct;33(5):426-434.