胆泥症は、胆嚢に泥状の胆汁が溜まる病気です。
中高齢の犬に多いものの症状が現れにくく、健康診断などで偶然見つかるケースがほとんどです。
他に異常がなければ治療しない場合もありますが、別の病気が原因になっていることもあるため、注意深く経過を見る必要があります。
胆泥症の犬の飼い主様からは食事についての質問もよくいただきますので、今回は食事管理も含めて解説します。
■目次
1.原因|高脂血症や甲状腺機能低下症などとの関連が疑われている
2.症状|ほとんどが無症状。原因となる他の病気の症状が先に出る
3.診断|超音波検査で診断できる
4.治療|胆汁の流れをよくする薬を内服。経過観察のみの場合も
5.予防|肥満予防定期健診で健康をキープ
はっきりとした原因はわかっていませんが、中高齢の犬での発生が多いため、加齢に伴い発生のリスクが上がると考えられています。
また、高脂血症、脂質代謝異常の犬に多く見られるため、これらの好発犬種であるミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー・スパニエル、シェットランド・シープドッグは注意が必要でしょう。
脂肪分や炭水化物が多く含まれる食事もリスクを上げる可能性があると言われています。
原因と考えられる病気には、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など内分泌疾患や、胆嚢炎などがあります。
ほとんどは無症状ですが、肝臓の病気や胆嚢炎を起こしていれば、黄疸や元気・食欲の低下が見られることがあります。
胆泥症よりも内分泌疾患など他の病気の症状に先に気づくことが多く、それらの検査や、健康診断で超音波検査をした際に偶然見つかるケースがほとんどです。
超音波検査で胆嚢を観察した際、胆泥症であれば真っ黒な胆嚢内に白い泥状のものが見られます。
超音波検査は胆嚢炎や胆嚢粘液嚢腫の診断にも有用です。
検査の際には、お腹をゆするか体の向きを変え、胆泥に可動性があるのかも観察します。
血液検査も重要で、肝臓の数値に異常がないかを確認します。
また、原因となる高脂血症や内分泌疾患がないかを確認することもあります。
胆泥以外に異常がなければ、治療を行わずに経過を観察することもありますが、血液検査で肝臓の数値に異常が見られた場合は、利胆剤と呼ばれる胆汁の流れをよくする薬を投与するなど、内科治療を行います。
また、胆嚢炎や内分泌疾患など、原因とも考えられる他の病気がある場合は、その治療も合わせて行います。
食事は、高脂血症がある犬には低脂肪食をお勧めしていますが、そうでない場合は、高脂肪・高カロリーの食事を避け適度に運動させていれば特別な食事は必要ありません。
はっきりとした原因がわかっていないため明確な予防法はありませんが、健康的な生活が鍵になるでしょう。
高脂肪・高カロリーの食事を避け、栄養バランスの取れた適切な量の食事と、適度な運動で、肥満を予防しましょう。
肝臓と胆嚢も症状が出にくい臓器です。
早期発見のためにも定期的な健康診断が重要です。
光が丘動物病院グループ
東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
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