犬や猫の精巣は2つあり、生まれた直後はお腹の中(腹腔内)にありますが、遅くとも生後半年以内に鼠径部(お腹側の両足の付け根あたり)を通って陰嚢に固定されます。このとき、腹腔内や鼠径部に精巣が留まり陰嚢に降りないことを潜在精巣と言います。
これといった症状が見られないため、他の病気の治療時や去勢手術前の検査で偶然発見されることもありますが、潜在精巣の犬や猫は精巣腫瘍の発生リスクが非常に高いため、治療として早い時期の去勢が有効です。
今回は犬と猫の潜在精巣について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因|遺伝が主な要因?純血種の小型犬に多い
2.症状|若い時期は無症状。高齢になってから精巣腫瘍の発生リスクが高い
3.診断|触診で診断可能。潜在精巣の位置の確認には超音波検査が必要
4.治療|去勢手術時に鼠径部や腹腔内の精巣を摘出する
5.予防|高齢になってから腫瘍化のリスクがあるため早期の去勢手術を
潜在精巣の発生には遺伝的な要因が疑われており、犬ではトイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、ミニチュア・ダックスフンド、チワワなどといった純血種の小型犬に多い傾向にありますが、実際にはどの犬種にも発生することがあります。
一方、猫においては犬ほど頻繁には見られません。
基本的に無症状で、普段の様子を観察するだけでは早期に発見することはできません。
潜在精巣の場合は正常に精子を作ることができないため、生殖に関わる問題が起こります。
さらに、年齢が上がるにつれて腫瘍化するリスクも高まるため、高齢になると精巣腫瘍による症状、例えば左右対称の脱毛などが現れることがあります。
犬や猫の精巣は、通常であれば生後2〜3ヶ月、遅くとも半年以内に陰嚢に降りてきますが、生後半年を過ぎても触診で陰嚢内に2つの精巣が確認できない場合は、潜在精巣と診断します。
潜在精巣が鼠径部にある場合は触診でわかることもありますが、超音波検査による確認が必要となります。
鼠径部にある潜在精巣の場合は、皮膚を小さく切開して摘出します。腹腔内の潜在精巣の場合は開腹手術を行って、留まっている精巣を摘出します。
また、潜在精巣の原因には遺伝が疑われているため、正常に降りている方の精巣も、将来的な健康リスクを避けるために去勢手術を通じて摘出することが推奨されます。
潜在精巣は遺伝的な要因が関わっているため、予防することは難しいですが、早期発見・早期治療によって、精巣腫瘍のリスクを大幅に減らすことができます。
潜在精巣のある犬や猫から生まれた子供たちも同じ問題を抱えるリスクが高いです。そのため、同じ状態を持つ犬や猫が増えないよう、これらの動物からの繁殖は避けるようにしましょう。
もし、新しく迎えた犬や猫が潜在精巣である場合は、元々いた場所(ペットショップやブリーダーなど)へその情報を伝えることが大切です。
潜在精巣は健康診断やワクチンの時の身体検査で発見できますので、男の子の犬や猫を迎えたら、お早めにご来院ください。
また、犬や猫の精巣は通常、生後半年までに陰嚢に降りるため、ご自宅で触って確認するのも良いでしょう。
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<参考文献>
Meyers-Wallen VN. Gonadal and sex differentiation abnormalities of dogs and cats. Sex Dev. 2012;6(1-3):46-60.