肛門嚢は肛門腺をためる袋で、肛門の脇に左右ともあり、興奮したときや排便した時に少しずつ出ます。独特の匂いがあり、縄張りなどを誇張するためのものと言われています。
肛門嚢はときおり、炎症を起こしたり、化膿して自壊したりして皮膚をつきやぶり、膿がお尻の脇から出てくることがあります。これを肛門嚢炎とか肛門周囲瘻などといい、かなりの痛みを伴います。
人でいうところの痔瘻のようなもので、原因は肛門腺のお手入れ不足とか年齢とかいろいろなことが言われていますが、実際のところは原因が不明で、何回も繰り返し起こすことがしばしばです。
肛門嚢自体は生体に何の役目も立っていないので、くり返し起こすようであれば手術をして肛門嚢を摘出する方が良いと思います。肛門嚢炎は命をとる病気ではありませんが、一度なるとかなりの痛みを伴うので、見ているだけで切なくなってきます。
日々の肛門腺のお手入れだけでは完全に予防することができないので、一度炎症を起こしてしまったら、手術を検討したほうが良いと思います。
シリコン注入器を使って、肛門の脇にある肛門嚢の入口からシリコンを注入していきます。
シリコンを注入し、消毒をして、手術の準備終了です。この症例では左側の肛門嚢が化膿して、肛門脇の皮膚から膿が出てきました。
左側の肛門嚢を摘出しています。肛門嚢中にシリコンが入っているので、ほかの組織との見分けがつきやすく、取残しがありません。
ぶどうの房をメスで剥くような感じの繊細な作業です。
取り残しなく摘出完了です。
片側が肛門嚢炎になった場合、大抵は逆側の肛門嚢も炎症、化膿を起こしやすいので、両側摘出します。
右側も取残しがないように摘出します。
とにかく地道な作業です。出来るだけ肛門周囲の組織を傷つけないように、繊細にメスを使用していきます。
両側とも摘出終了です。これで2度と肛門嚢で不快になることはありません。
肛門嚢を摘出したあとを縫合していきます。
しばらくの間は便切れが悪かったりと手間がかかりますが、肛門の形含めて、しばらくすると元通りになります。