寒い冬が終わり、少しずつ春の訪れを感じる季節になりました。
この時期は気温の変化が激しく、気圧の変動も大きいため、人間と同じように犬や猫の体調にも影響が出やすくなります。
特に、気管支炎を発症すると咳が続くことがあり、悪化すると呼吸が苦しくなることもあります。
さらに、適切な治療を受けずに放置してしまうと症状が悪化し、呼吸困難を引き起こすこともあります。愛犬や愛猫がつらい思いをしないためにも、早めの対処が大切です。
今回は、春先に増えやすい犬や猫の気管支炎について、咳の特徴や症状が悪化した際に見られる呼吸困難のサイン、動物病院での診察や治療方法について解説します。
■目次
1.気管支炎とはどんな病気?
2.気管支炎のサインと症状
3.診断方法
4.治療方法
5.ご家庭でのケア
6.まとめ
気管支炎とは、気管支に炎症が起こる病気です。犬や猫にも発症し、咳や呼吸の異常などの症状が見られます。
犬ではケンネルコフと呼ばれるウイルス性の伝染性気管支炎がよく知られています。
一方、猫ではカリシウイルスなどのウイルスが原因となる気管支炎のほか、アレルギーが関与する猫喘息も多く見られます。
特に猫喘息は、花粉やハウスダスト、カビなどのアレルゲンが引き金となりやすく、春先は注意が必要です。
▼ケンネルコフについてはこちら
▼猫カリシウィルス感染症についてはこちら
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この季節は寒暖差や気圧の変化が大きいだけでなく、花粉や黄砂といったアレルゲンが空気中に増える時期でもあります。そのため人間と同じように、犬や猫も体調を崩しやすく、気管支炎を発症するケースが増えます。
気管支炎には急性気管支炎と慢性気管支炎の2種類があります。
◆急性気管支炎
突然症状が現れ、比較的短期間で回復することが多いのが特徴です。
◆慢性気管支炎
咳などの症状が長期間続き、繰り返し悪化することもあります。
どちらの場合も重症化すると呼吸困難に陥り、命に関わることもあります。咳が続く、呼吸が苦しそうと感じたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。
気管支炎の主な症状は咳です。特に運動後や興奮したときに咳が出やすくなる傾向があります。
また、喉に何か詰まったように「ケッケッ」と吐くような咳をすることもあります。この咳は猫の場合、嘔吐と間違えられることも少なくありません。
さらに、以下のような症状が見られることもあります。
・くしゃみや鼻水
・発熱
・疲れやすく、活動的でなくなる
気管支炎が進行すると呼吸が苦しくなり、命に関わることもあります。
特に、酸欠による「チアノーゼ(舌や歯ぐきが青白くなる症状)」は危険なサインです。
以下のような呼吸困難の兆候が見られたらすぐに対応しましょう。
・ぐったりして動かない
・「ハァハァ」と浅く速い呼吸を繰り返す
・舌や歯ぐきが青白く見える(チアノーゼ)
このような症状が出たら、迷わずすぐに動物病院に連れて行きましょう。
犬や猫の病気全般に言えることですが、症状が現れた時点ですでに病気が進行していることが多いです。特に気管支炎の場合、軽い咳から始まっても様子を見ているうちに悪化してしまうことがあります。
そのため、元気や食欲があっても、咳やくしゃみ、鼻水などの症状が見られたら、できるだけ早めに動物病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
<問診>
診察では、まず問診を行います。獣医師は以下のような点を確認するため、事前に整理しておくとスムーズです。
・いつから症状が見られるか
・特定の季節に症状が悪化するか
・ワクチン接種の有無
・最近、旅行やドッグランなどに行ったか
・家族に喫煙者がいるか
飼い主様からの情報は診断の大きな手がかりになりますので、できるだけ詳しく伝えましょう。
<身体検査・各種検査>
問診の後、聴診を含めた全身の身体検査を行います。そのうえで、必要に応じて以下のような検査を実施します。
・レントゲン検査・超音波検査:肺や気管支の状態を詳しく確認する
・血液検査:感染症の有無や炎症の程度を評価する
これらの検査によって、気管支炎の原因や重症度を見極め、適切な治療方針を決定していきます。
気管支炎の治療では、症状の緩和と原因の除去を目的とした内科的治療を行います。
以下のような薬を使用することが一般的です。
・気管支拡張剤:気道を広げて呼吸を楽にする
・抗菌剤(抗生物質):細菌感染がある場合に使用
・抗炎症剤(ステロイドなど):気管支の炎症を抑える
また、「ネブライザー治療」を行うこともあります。これは、液体の薬を生理食塩水とともに霧状にし、気管支に直接吸入させる治療法で、炎症を鎮める効果が期待できます。
治療を効果的にするためには、日常生活の環境を整えることも大切です。
◆室内環境を清潔に保つ
こまめな掃除でハウスダストやアレルゲンを減らす
◆空気清浄機を活用する
花粉やホコリなどのアレルゲンを除去し、空気をきれいにする
◆加湿器を使用し、乾燥を防ぐ
空気が乾燥すると気道が刺激され、咳が悪化しやすくなる
◆タバコの煙を避ける
副流煙は気管支炎の発症や悪化の原因となるため、犬や猫のいる場所では禁煙しましょう
気管支炎は、早期治療と生活環境の見直しで改善が期待できる病気です。愛犬や愛猫が少しでも楽に過ごせるよう、適切なケアを心がけてあげましょう。
春先は寒暖差や気圧の変化が大きく、花粉や黄砂などのアレルゲンも増える時期です。そのため、人間と同じように犬や猫も体調を崩しやすく、気管支が外気に直接触れることで炎症を起こしやすくなります。
咳やくしゃみ、鼻水などの症状が見られたら、放置せずに早めに動物病院を受診しましょう。気管支炎は悪化すると呼吸困難を引き起こすこともあるため、早期の診断と治療が大切です。
愛犬や愛猫が快適に過ごせるよう、室内の環境を整えることも予防のポイントになります。日々のケアを大切にしながら、春の健康管理をしっかりしてあげましょう。
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