犬や猫にとって、「目」は周りの世界を知るために欠かせない大切な感覚器です。
もし視力が低下したり、最悪の場合には失明してしまったりすると、普段の生活に支障が出るだけでなく、大きなストレスを感じる原因にもなってしまいます。
とはいえ、犬や猫は人間のように「目が痛い」「見えにくい」と言葉で伝えることができません。
そのため、飼い主様が目の異変に気づいたときには、すでに症状が進行してしまっているケースも珍しくないのです。
だからこそ、日頃から愛犬・愛猫の様子をよく観察し、少しでも「いつもと違う」と感じたら、早めに対処することがとても大切です。
今回は、目に現れやすい異変のサインや、犬や猫に多い目の病気、さらに日常生活の中でできるケアのポイントについて解説します。
■目次
1.愛犬・愛猫の目に異変?目の病気を知らせるサインとは
2.ご自宅でできる目の健康チェックリスト
3.代表的な目の病気について
4.目の病気を予防するために
5.おわりに|愛犬・愛猫の目の健康を守るために
犬や猫の目は、体の不調をいち早く知らせてくれる大切なサインのひとつです。
ここでは、気をつけたいサインをわかりやすくご紹介します。
<目に現れる異変>
健康な目は、澄んでいて透明感があり、ほどよく潤っています。白目は白く、黒目は左右で同じ大きさです。
こうした状態が保たれていることが、目の健康の目安になります。
ですが、以下のような変化が見られるときは、病気の可能性があります。
・目に透明感がなく、濁っている
・表面が乾いて見える
・白目が赤く充血している、または黄色くなっている
※白目が黄色く見える場合は、肝臓の病気が関係していることもあります
・黒目が白っぽく濁っている
・左右の黒目の大きさが違う
また、「瞬きが増える」「目を細める」「目を開けたがらない」などの仕草も、目に違和感や痛みがあるサインです。
前足などでしきりに目をこするような行動も、かゆみや異物感の表れかもしれません。
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<目やにの変化に注意>
目やにも、目のトラブルを見分ける大事なサインになります。
寝起きに少しついている程度であれば心配ありませんが、以下のような状態は注意が必要です。
・目やにが常に出ている
・ベタベタしていて取りにくい
・黄色や緑っぽい色をしている
・目やにが目を覆っていて、開けにくそうにしている
こうした目やには、感染症や炎症などが関係していることがあります。
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<涙が多いときのサイン>
涙は目の表面を保護し、汚れや細菌を洗い流す役割があります。
健康な状態でもある程度の分泌はありますが、涙が過剰に出ていたり、目の周りがいつも濡れていたりする場合は、以下のような原因が考えられます。
・まつげや毛が目に当たっている
・目にゴミや異物が入っている
・アレルギーや炎症が起きている
・涙が鼻へうまく流れない(鼻涙管閉塞)
鼻涙管がつまると、涙が常にあふれてしまい、目の下が濡れて茶色く変色してしまうこともあります。
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<視力が落ちているサイン>
視力が落ちてくると、行動にも変化が現れます。
・散歩に行きたがらなくなった
・特に夕方以降、暗くなると外に出たがらない
・家の中で物によくぶつかる
・初めての場所ではニオイをたどって歩く
こうした行動は、目が見えづらくなっているサインかもしれません。
日頃から注意して見てあげることが大切です。
簡単なチェックで、目の異変に早く気づくことができます。
気になる項目があれば、早めの受診を検討しましょう。
ここからは、犬や猫によく見られる目の病気について、主な症状や特徴をご紹介します。
◆結膜炎・角膜炎
結膜や角膜に炎症が起きる病気で、以下のようなサインが見られます。
・目の充血
・涙や目やにが増える
・まぶたの腫れ
・痛みから目を細める
原因としては、細菌やウイルスの感染、外傷、毛やゴミなどの異物、アレルギーなどが考えられます。
特に猫ではウイルス性の結膜炎が多く見られ、まぶたが腫れて裏返ってしまうこともあります。
ウイルス性の結膜炎は、同居している猫にも感染することがあるため、新しい猫を迎える際には注意が必要です。
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◆ぶどう膜炎
ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜)という、目の中の血管が集まっている部分に炎症が起きる病気です。
以下のような症状が見られます。
・目の充血
・しょぼつき、目を開けにくそうにする
・涙や目やにが増える
原因はさまざまで、犬ではアレルギーや免疫系の病気、猫では原因がはっきりしない特発性のものや、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの感染症が関係することがあります。
悪化すると白内障や緑内障などの重い病気につながる可能性もあるため、早めの治療が大切です。
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◆角膜潰瘍
角膜に傷ができる病気です。痛みをともなうため、以下のような症状が見られます。
・目をしょぼつかせる
・涙や目やにが増える
・目の表面が白っぽく濁る
・目が赤くなる(充血)
原因には、外からの傷、シャンプーや薬剤の刺激、ドライヤーの熱、または目を掻くことなどが挙げられます。
毛やゴミが入った際や、アレルギーで目がかゆくなってこすってしまった場合にも、角膜に傷がつくことがあります。
▼角膜潰瘍についてはこちらから
◆乾性角結膜炎(ドライアイ)
涙の分泌が不足し、目が乾いてしまう病気です。
以下のような変化が見られることがあります。
・目に潤いがなくなる
・目の表面が濁って見える
・瞬きが増える、または逆に減る
涙が少ない状態が続くと、角膜が傷つきやすくなり、角膜潰瘍などの病気につながることもあります。
▼乾性角結膜炎(ドライアイ)についてはこちらから
◆白内障
黒目(=水晶体)が白く濁ってくる病気です。進行すると真っ白になり、視力を失ってしまうこともあります。
初期には、黒目が少し白っぽく見える以外に目立った症状はありません。
そのため、愛犬や愛猫は普段通りに行動できてしまい、飼い主様が異変に気づきにくいことも多いのが特徴です。
白く見えている場合は、たとえ症状がなくても、一度検査を受けることをおすすめします。
▼白内障についてはこちらから
◆緑内障
緑内障は、目の中の圧力(眼圧)が異常に高くなり、網膜が圧迫されて視力が失われてしまう病気です。
初期の段階では症状が出にくいこともありますが、眼圧が高まることで目に強い痛みが出てくると、以下のような症状が見られます。
・目を細める
・目を開けづらそうにする
・前足などで目を掻くような仕草を見せる
・涙が増える
・目が赤く充血する
また、早期発見のためには、定期的な眼圧検査を受けることが大切です。
見た目に変化がなくても、シニア期に入った愛犬・愛猫は一度チェックしておくと安心です。
▼緑内障についてはこちらから
愛犬や愛猫の目の健康を守るためには、日頃のちょっとしたケアがとても大切です。
ここでは、おうちでできる予防とケアのポイントをご紹介します。
◆目の周りを清潔に保つ
目の周りに目やにやゴミがついているときは、やさしく拭き取ってあげましょう。
乾いて固まっている場合は、無理に取ろうとせず、水やぬるま湯でふやかしてから、やさしく取り除いてあげてください。
無理にこすったり引っ張ったりすると、目や皮ふを傷つけてしまうおそれがあります。
また、愛犬・愛猫にとっても不快な思いをさせてしまい、飼い主様との信頼関係に影響してしまうこともありますので、難しいようであれば動物病院に相談しましょう。
◆毛が目に入らないように注意
毛の長い犬種や猫種では、目に毛が入りやすく、それが原因で角膜に傷がついてしまうこともあります。
定期的にトリミングをして、目の周りの毛を短めに整えておくと安心です。
▼トリミングについてはこちらから
◆お手入れ時の注意ポイント
日常のお手入れでも、目に負担がかからないように注意してあげましょう。
・ブラッシングでは、ブラシが目に当たらないように気をつける
・シャンプーの際は、洗剤が目に入らないようにする
・ドライヤーは、熱風が直接目に当たらないようにする
些細なことのように見えても、こうした積み重ねが目の健康を守ることにつながります。
<目の異変に早く気づくことが大切>
何よりも大切なのは、普段から愛犬・愛猫の目の様子をよく観察することです。
「いつもと違うかな?」と感じる小さな変化が、目の病気の初期サインであることも少なくありません。
気になる症状がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
目の病気は、早期に発見し、軽いうちに治療を始めることがとても大切です。
日頃のケアと合わせて、定期的な健康チェックや眼科検査を受けることで、目のトラブルを防ぎやすくなります。
目の病気は、早期に発見し、適切な治療を受けることで、その後の経過が大きく変わります。
そのためにも、日頃からの観察がとても大切です。
飼い主様が「いつもと違うかも」と感じたその気づきが、早期発見への第一歩になります。
気になる症状が少しでもあるときは、すぐに動物病院へご相談ください。
また、中にははっきりした症状が出にくい目の病気もあります。
定期的に目の検査を受けることも、愛犬・愛猫の目の健康を守るうえでとても大切です。
目に関してご不安なことや、気になることがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
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