顎の骨の骨折(下顎骨骨折)は、交通事故や落下事故、他の犬や猫との喧嘩で噛まれたといった強い衝撃が原因で起こることが多くありますが、重度の歯周病が原因で発生するケースもよく見られます。
治療は外科手術が必要な場合が多く、術後は食事の介助が欠かせません。
歯周病の治療や予防は下顎骨骨折の予防にもつながるため、日々のデンタルケアがとても重要です。
下顎は食べ物を噛み砕くために欠かせない部分であり、この部位の骨折は犬や猫の生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
今回は犬と猫の下顎骨骨折について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因|外傷のほかに基礎疾患や歯周病が原因になる
2.症状|口が閉じられない、うまく食べられない、口や鼻から血が出る
3.診断|頭部のレントゲン検査で骨折を確認
4.治療|外科手術が必要なケースが多い
5.予防|歯周病予防のためデンタルケアが必要
下顎骨の骨折は、交通事故や高所からの落下、飼い主様に踏まれてしまった、高いところから重いものが顔に落ちてきた、ドアに挟まったなど、強い衝撃が加わることが原因で起こります。
また、喧嘩で他の動物に噛まれた際に折れてしまうこともあります。
しかし、強い力が加わらなくても、重度の歯周病が進行して歯槽(歯と顎の骨をつなぐ構造)が溶けている状態では、少しの力でも下顎骨が骨折してしまうことがあります。
当院では歯石除去は必ず麻酔をかけた状態で行っていますが、無麻酔での歯石除去中に犬や猫が暴れて折れてしまうというケースもあり得ます。
さらに、代謝性疾患や下顎の腫瘍(骨肉腫や扁平上皮癌など)によって骨が融解すると、強い衝撃がなくても折れてしまうこともあります。
下顎骨骨折では、以下のような症状が見られます。
・口がうまく閉じられない、開けられない
・食事や水をこぼしてしまう、うまく噛めない
・飲み込めない
・口や鼻から血が出る
・下顎が腫れる
・触ると痛がる など
身体検査で口の中の状態を確認した上で、頭部のレントゲン検査やCT検査により、骨の状態や周辺組織の損傷具合を確認します。
CT検査や治療には麻酔が必要となるため、術前検査として血液検査も行います。
骨折により骨がずれていない場合は、安静を保ちながら痛みを和らげるための鎮痛剤や抗生物質が処方されます。また、炎症を抑えるための薬も使用されることがあります。
さらに、医療用のテープで口の周りを固定し、骨がくっつくのを待ちますが、外科手術が必要になるケースがほとんどです。
外科手術では犬や猫の大きさや骨折の状態に合わせて、プレートやワイヤー、アクリルボンドなどを用いて骨を正しい位置に固定します。手術後は、しばらくの間、顎を固定し、回復を促します。
手術後や治療後の回復期間中は安静が重要です。特に食事には注意が必要で、柔らかいものから食べさせ、状態によってはチューブで流動食を与える場合もあります。
下顎骨骨折は事故以外にも歯周病が原因になることがあるため、日頃のデンタルケアが非常に重要です。
犬も猫も人間よりも歯石がつくスピードが速く、歯周病になりやすいため、できるだけ毎日歯磨きを行いましょう。また、歯石が溜まってきた場合には、病院での歯石除去を検討することをお勧めします。
また、猫の場合は屋外での野良猫との喧嘩や交通事故などで下顎骨が折れてしまうことがあります。安全のためにも、完全室内飼いの徹底をおすすめします。
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