中手骨は人間で言う手の甲の骨で、犬や猫も人間と同じく5本あります。
犬や猫の場合、特に第三、第四中手骨（中指と薬指の中手骨）が骨折すると体重をかけられなくなり、前足を上げたままにするなどの異常が見られます。

治療方法としては、外科手術による整復と術後のギプス固定が一般的です。一部の場合ではプレートを用いることもありますが、小型犬や猫では、ピンを使った外科的整復や創外固定で対処することもあります。

今回は犬と猫の中手骨骨折について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

■目次
1.原因｜不意の事故によるものが多い
2.症状｜前足を上げる、痛がる
3.診断｜身体検査とレントゲン検査
4.治療｜手術により外科的に整復する
5.予防｜特に小型犬や若い犬・猫は特に注意！

原因｜不意の事故によるものが多い

中手骨の骨折は、隙間やドアに挟まれた、落下、散歩中にリードに引っかかった、飼い主様が誤って踏んでしまった、交通事故などの強い外力により発生することが多くあります。

ただし、トイプードルなどの小型犬や若い犬・猫では、骨が細いため、少しの力でも骨折してしまうことがあります。そのため、日常の生活でも十分に注意が必要です。

症状｜前足を上げる、痛がる

骨折の程度と部位によりますが、ほとんどのケースでは骨折した側の前足に体重がかけられないため、正常に歩けない、前足を上げたままになる、触ると痛がる、手の甲が腫れるなどの症状が見られます。

診断｜身体検査とレントゲン検査

視診と触診で骨折が疑われる部位を確認し、痛みの程度や他の異常の有無を調べます。

正確な診断を行うためにはレントゲン検査が必要です。レントゲンは骨の状態を詳細に映し出すため、どの部分がどの程度骨折しているのかを正確に把握することができます。

治療｜手術により外科的に整復する

中手骨の骨折の治療では、全身麻酔下にて外科的整復を行います。
骨の固定にはプレートを用いることもありますが、小型犬や猫では使用できる大きさのプレートが少ないため、ピンによる外科的整復が一般的です。

手術後はギプスなどで外固定を行い、レントゲン検査で骨の修復状態を確認します。骨が修復したら、再度手術を行ってプレートやピンを外します。

なお、骨折している中手骨の状態によっては、外固定のみで対処することもあります。

予防｜特に小型犬や若い犬・猫は特に注意！

中手骨骨折のほとんどは事故によるものですので、原因となるような事故が起こらないよう注意をしましょう。
例えば、抱っこしているときに落とさないようにする、階段など高い段差にはスロープをつける、滑りやすい床にはカーペットやマットを敷く、などが考えられます。
特に小型犬や若い犬・猫では、少しの段差でも骨折してしまうことがあるため、抱っこから下ろすときは四つの足がすべて地面に着いた状態で手を離すようにしましょう。

中手骨が骨折すると、骨折した部位や程度によっては前足を上げられないこともあります。
触ったときに痛がっている、歩き方が少しおかしいなど、明らかな骨折症状を示さなかったとしても、様子を見ているうちに骨がずれた状態で修復されると、骨格に異常をきたし、治療が難しくなることがあります。そのため、異常が見られたらなるべくお早めに受診してください。

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＜参考文献＞
Kornmayer M, Failing K, Matis U. Long-term prognosis of metacarpal and metatarsal fractures in dogs. A retrospective analysis of medical histories in 100 re-evaluated patients. Vet Comp Orthop Traumatol. 2014;27(1):45-53.

Rosselló GC, Carmel J, Pead M, Lacosta VV, Lafuente P. Comparison of post-operative outcomes after open or closed surgical techniques to stabilize metacarpal and metatarsal fractures in dogs and cats. BMC Vet Res. 2022 Aug 4;18(1):300.