春になると、犬や猫が皮膚のかゆみや赤み、脱毛などのトラブルに悩まされることが増えてきます。「最近、うちの子がよく体を掻いている」「毛が抜けてしまって心配…」といったご相談をいただくことも多くなります。
春は花粉やノミ・ダニなどのアレルゲンが増えるだけではなく、気温や湿度が上がることで菌やカビが繁殖しやすくなるため、皮膚トラブルに悩まされる犬や猫が増えるシーズンです。もし、愛犬や愛猫に皮膚のかゆみや赤み、脱毛などのサインが見られたら、症状が軽いうちに早めの対応を心がけましょう。
今回は、春に増える犬や猫の皮膚トラブルについて、症状と予防法を解説します。
■目次
1.どうして春に皮膚トラブルが増えるの?
2.春の代表的な皮膚トラブルとその症状
3.皮膚トラブルを防ぐために
4.ブラッシングのポイント
5.早めの受診が大切!動物病院でのケアの重要性
6.まとめ
春に犬や猫の皮膚トラブルが増える原因には、季節の変わり目による皮膚環境の変化や、花粉やダニなどの環境要因、春特有の生活環境の変化などが影響しています。
◆季節の変わり目による皮膚の変化
春先は、日中と夜間の寒暖差が大きくなり、人だけでなく犬や猫も体調を崩しやすい時期です。この時期には皮膚のバリア機能も低下しやすく、かゆみや赤み、乾燥などのトラブルが増えてしまいます。
また、紫外線が強くなったり湿度が変化したりすることで、乾燥肌になりやすいのも、皮膚のトラブルが増える理由です。
さらに、春は犬や猫にとって「換毛期」です。冬のふわふわした被毛から、夏の被毛へと生え変わるこの時期は抜け毛が一気に増えます。
もし、ブラッシングが十分に行われていないと、抜け毛が皮膚に残ってしまい、通気性が悪くなります。その結果、皮膚が蒸れてしまい、細菌や真菌(カビ)が繁殖しやすい状態になってしまいます。
◆花粉やダニなどのアレルゲンの影響
春になると花粉症に悩まされる飼い主様も多いと思いますが、実は犬や猫も花粉にアレルギーを持っている場合があります。
また、気温が暖かくなると、ノミやダニといった寄生虫も活発に動き出します。これらの寄生虫が犬や猫の皮膚に噛みついたり、刺したりすることで、強いかゆみや皮膚トラブルの原因になってしまいます。
◆春特有の生活環境の変化とリスク
春の陽気に誘われて、飼い主様も愛犬と一緒に外出する機会が増えますよね。お散歩やお出かけの時間が長くなることで、環境中の花粉やダニなどのアレルゲンに触れる機会も増えてしまいます。また、窓を開ける時間が増えることで、外から花粉やほこり、ダニなどのアレルゲンが風に乗って室内に入ってくることがあります。
春に多く見られる犬や猫の皮膚トラブルには、アレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎、細菌性皮膚炎、真菌性皮膚炎などがあります。
◆アレルギー性皮膚炎・アトピー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎は、食べ物(牛肉、鶏肉、乳製品、穀物など)のほか、花粉やハウスダスト、ノミの噛み傷など、さまざまなアレルゲンに対して体が反応することで起こる皮膚トラブルです。
一方、アトピー性皮膚炎は、主に環境中の物質(花粉、ハウスダスト、カビ、ダニなど)に対して、体が過剰に反応することで引き起こされる慢性的な皮膚炎です。この病気は、遺伝的な要因や、皮膚のバリア機能の低下も関係しているとされています。
これらの皮膚炎に共通する主な症状は、まず「かゆみ」です。
かゆい部分を舐めたり噛んだり掻きむしることで、出血や脱毛が見られます。
さらに、かゆみや炎症が長引くと、傷口から細菌性皮膚炎や真菌性皮膚炎といった二次感染を引き起こしやすくなります。
また、場合によっては、目の周りが腫れるといった症状が現れることもあります。
特に、症状がなかなか治らない、または再発を繰り返す場合は、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎が疑われます。
◆細菌性皮膚炎
皮膚の表面には普段から常在菌が存在していますが、これが異常に増殖すると、皮膚炎を引き起こします。
細菌性皮膚炎の症状には、膿がたまった水疱や、フケを伴った円形の赤み、そしてかさぶたができます。
◆真菌性皮膚炎
真菌性皮膚炎は、マラセチアなどの真菌(カビの仲間)が皮膚の表面で異常に増殖することで起こります。特に皮膚が蒸れやすい場所で発症しやすく、耳やしわのある部分、脇の下や指の間などでよく見られます。
主な症状としては、皮膚がベタベタして赤くなり、触ると湿った感じがすることがあります。
どのような皮膚トラブルでも、最初に現れるサインは「かゆがる様子」であることが多いです。
愛犬や愛猫が体を頻繁に掻いたり、舐めたりしているときは、皮膚に違和感やかゆみを感じているかもしれません。
このような状態を放っておくと、皮膚炎が悪化して、脱毛や出血、さらに化膿(傷口に膿がたまること)してしまうことがあります。
皮膚トラブルを防ぐためには、日頃から愛犬や愛猫の行動をよく観察し、普段と違う様子がないか気にかけてあげましょう。
また、ブラッシングやスキンシップを通して、皮膚や被毛の状態をこまめにチェックすることも予防のポイントです。
< ブラシの選び方>
・長毛種の場合:スリッカーブラシやコームを使うことで、毛のもつれや絡まりを丁寧にほぐすことができます。
・短毛種の場合:ラバーブラシや手袋型ブラシを使うと、抜け毛や汚れをやさしく取り除くことができます。
<ブラッシングのコツ>
ブラッシングは、毛並みに沿ってやさしく行いましょう。 もつれた毛は、無理に引っ張らずに、少しずつ丁寧にほぐすことが大切です。
特に、耳の裏や脇の下、お腹、しっぽの付け根などのデリケートな部分も忘れずにケアしてあげましょう。
特に、換毛期の春は抜け毛が増えるため、こまめにブラッシングをして皮膚を清潔に保つことが効果的です。
皮膚のかゆみや違和感が続くことは、犬や猫にとっても大きなストレスになります。
特に、皮膚トラブルが重症化してしまうと、治療にも時間がかかりますので、気づいた時点で早めに対応することが大切です。
さらに、皮膚の病気は、全身性の病気のサインとして現れることもあります。例えば、ホルモンの異常や免疫のトラブル、さらには内臓の病気が隠れていることもあります。
そのため、愛犬や愛猫が若くても油断せず、定期的に健康診断を受けて、健康状態をチェックすることが重要です。健康診断では、血液検査や内臓のチェックなど、普段は気づきにくい異常も確認することができます。
春は、花粉やノミ・ダニが増えることや、換毛期などの影響で、愛犬や愛猫の皮膚にトラブルが起こりやすい季節です。特に、かゆみが見られることが多いですが、掻きむしってしまうことで、皮膚に傷がつき、脱毛や出血、化膿といった症状が進行してしまうリスクがあります。
この時期は、ブラッシングやスキンシップを通して、普段から皮膚の状態をよく観察することが大切です。特に、抜け毛や赤み、いつもと違う様子が見られたら、早めに対処しましょう。
もし、少しでも「おかしいな?」と感じることがあれば、お早めに当院にご相談ください。
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