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愛犬のおしっこの回数が急に減ったとき|考えられる原因と受診の目安を獣医師が解説

2025.01.17
犬の病気

愛犬のおしっこの回数が急に減ると、「何か病気かもしれない」と不安になりますよね。

実際、排尿回数が急に減る場合には、何らかの病気が隠れている可能性があります。特に、排尿回数や排尿時の様子、尿の量、尿そのものの色や匂いなどの変化は、愛犬の健康状態を知るうえでとても重要なサインです。

今回は、犬の排尿回数が減るときに考えられる原因や注意したいポイント、そしてどのような場合に受診を検討すべきかを解説します。

■目次
1.正常な犬の排尿回数とは?
2.排尿の回数が減る主な原因
3.尿の回数以外に注意すべきポイント
4.緊急性の判断基準は?
5.自宅でできるケアと予防法
6.おわりに

 

正常な犬の排尿回数とは?


犬の1日における排尿回数は、年齢や生活環境によって異なります。
一般的には、成犬で1日に3~5回、成長途中の子犬では7~10回、そして泌尿器系の機能が衰え始める老犬では5~6回ほどが目安とされています。
また、排尿するタイミングは、朝起きたときや散歩中、そして寝る前が多い傾向があります。

しかし、排尿回数は食事内容や飲水量、運動量、避妊の有無や季節により異なります
特に、避妊や去勢をしていない犬の場合、マーキング行動の一環で排尿回数が平均より多くなることがあります。
また、暑い季節には飲水量が増えるため排尿回数が多くなる一方、寒い季節には飲水量が減り、排尿回数も少なくなる傾向があります。

愛犬の体調の変化を早めに察知するためにも、普段から1日の排尿回数を記録しておきましょう。

 

排尿の回数が減る主な原因


尿は、血液中の老廃物や余分な水分を腎臓で濃縮して体外に排出する、大切な役割を担っています。
しかし、尿の量や回数が減る場合には、いくつかの原因が考えられます。主に「尿が作られない場合」と「尿は作られているけれど出せない場合」の2つに分類されます。

<尿が作られない場合>
尿が作られない原因には、以下のような腎臓や血流に関する問題が挙げられます。

・腎臓の機能低下
急性腎障害や腎炎、慢性腎臓病の末期などでは、腎臓が正常に働かなくなり尿が作れなくなります。

腎不全についてはこちらから

 

・血流の不足
腎臓は血液をろ過することで尿を作りますが、心臓病や脱水、大量出血などで腎臓に十分な血液が届かないと尿が作れなくなります。

犬の心臓病についてはこちらから

 

・水分摂取量の不足
病気ではありませんが、水を飲む量が減ると作られる尿の量も少なくなり、結果として排尿回数が減ることがあります。

 

<尿は作られているけれど出せない場合>
尿が腎臓で作られていても、尿の通り道に問題があると体外に排出できなくなることがあります。

・尿路結石症や膀胱炎
尿道が詰まったり、膀胱が炎症を起こしたりすることで尿がスムーズに排出されなくなります。

尿石症についてはこちらから

 

・腫瘍や外部からの圧迫
尿道や膀胱が腫瘍や他の原因で圧迫されると排尿が困難になります。

 

・雄犬特有の問題
去勢手術をしていない雄犬では、前立腺肥大や会陰ヘルニアが原因で尿が出にくくなることがあります。

去勢手術についてはこちらから

 

尿の回数以外に注意すべきポイント


犬の尿の回数が減ったときは、排尿回数だけでなく、以下のような他にも注意すべきサインがあります。

<尿の色や匂い、異物の有無>

・尿の色や匂いの変化
犬に多い細菌性膀胱炎では尿の色が濃くなり、独特の臭いが強くなることがあります。血尿が見られる場合もあるため注意が必要です。

膀胱炎についてはこちらから

 

・砂状の異物の混入
細菌性膀胱炎に伴うストルバイト結石症では、尿にキラキラした砂や石のようなものが混ざり、尿道を詰まらせてしまうことがあります。

膀胱結石についてはこちらから

 

<排尿時の様子>
膀胱炎や尿石症を患っている場合、排尿時に痛みを感じるため、排尿をしようとした際に「キャン」と鳴くことがあります。

また、尿道が詰まって尿が出せない場合は、何度も排尿姿勢をとるものの、出る尿はほんの少量、または全く出ないこともあります。
このような場合、ソワソワと落ち着かない様子を見せることが多いです。

 

<飲水量や食事量>
排尿回数に変化が見られた場合は、その前後で愛犬がどれくらい水を飲んでいるか、食事をどれだけ摂っているかを確認してみましょう。

 

<元気や食欲など全体的な健康状態>
排尿の問題は全身の健康状態と関係していることがあります。元気がない場合や、食欲が落ちている場合は、何らかの病気のサインである可能性があります。

 

緊急性の判断基準は?


愛犬の食事や飲水量、運動量に変化がないにもかかわらず、排尿回数が減った場合は、病気の可能性が考えられます。
基本的には早めの受診をおすすめしますが、特に以下の症状が見られる場合は、夜間であってもすぐに動物病院を受診してください。

丸1日排尿がない
何度も排尿姿勢をとるが排尿できないまたはほんの少量しか出ない
元気や食欲がない

 

<排尿ができないことで起こるリスク>
尿は体内の老廃物を濃縮し、外に排出するための重要な役割を果たしています。
排尿ができないということは、老廃物が体内に留まり続けることを意味します。
その結果、体内に有害な物質が蓄積し、尿毒症を引き起こして命に関わる深刻な状態に陥る可能性があります。

尿毒症についてはこちらから

さらに、排尿できない状態が続くと腎臓に大きな負担がかかり、急性腎障害や水腎症、腎炎などを引き起こすリスクがあります。

腎炎についてはこちらから

特に急性腎障害は、腎臓の機能が著しく低下する危険な病気で、早急に適切な治療を行わないと命に関わります。
たとえ治療に成功しても、慢性腎臓病に移行し、生涯にわたり治療が必要になることも少なくありません。

 

自宅でできるケアと予防法


排尿回数が減る原因となる病気を予防するためには、日頃からできるケア大切です。

<飲水量を増やす工夫>
飲水量を増やすことで、排尿を促し病気のリスクを下げることができます。
特に冬場は飲み水が冷たくなり、犬が水を飲む量が減りがちです。このような場合は、飲み水をこまめに新しいものに取り替えたり、少量のフードやヨーグルトを混ぜて風味をつけると良いでしょう。

 

<食事から水分を補給する方法>
犬は食事からも水分を摂ることができます。ドライフードを与えている場合は、ウェットフードを混ぜたり、フードをふやかして与えると効率よく水分を補給できます。

 

おわりに


排尿回数が急に減った場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。排尿できない状態が続くと腎臓に深刻なダメージが及ぶことがありますので、愛犬の排尿に異変を感じたら、早めに動物病院を受診してください。

また、動物の病気は、症状が現れたときにはすでに進行していることも少なくありません。定期的に健康診断を受けることで、病気の早期発見につながります。

排尿は愛犬の健康状態を知るための大切なサインです。日頃から排尿回数や排尿時の様子、尿の状態をよく観察し、異変を見逃さないように心がけましょう。
そして、少しでも気になることがあれば、迷わず当院にご相談ください。

 

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