鼻腔とは鼻の内部のことを指し、ここにできる腫瘍を鼻腔内腫瘍と呼びます。
犬の鼻腔内腫瘍の多くは悪性で、治療をせずにいると進行して命に関わる可能性があるため、早期発見と治療が非常に重要です。
鼻の内部の腫瘍が大きくなると目や頭の骨、さらには脳を圧迫し、さまざまな障害を引き起こします。
この病気に対する現在の主な治療法としては、放射線療法が推奨されています。
今回は犬の鼻腔内腫瘍について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因|中高齢から発生が増える。ほとんどは悪性
2.症状|くしゃみ・鼻水・鼻出血・目が飛び出る・神経症状など
3.診断|画像診断ではCT検査が必要
4.治療|放射線療法が推奨される
5.予防|鼻炎のような症状が続く場合は早めに検査を
腫瘍には悪性(がん)と良性がありますが、犬の鼻腔内腫瘍の多くは悪性であり、腺癌、軟骨肉腫、扁平上皮癌、未分化癌、骨肉腫などが含まれます。
発生率は全腫瘍の約1%程度と比較的低いですが、鼻の内部という発見しにくい部位で発生するため、早期発見と早期治療が難しい疾患です。
犬の鼻腔内腫瘍の原因は明確にはわかっていませんが、中高齢の中型犬や大型犬に多く見られると言われています。
初期の段階では、くしゃみや鼻水といった鼻炎のような症状が見られますが、症状が進行するにつれて、鼻血が出るようになります。
また腫瘍が大きくなると、鼻が膨らむ、目を圧迫して目が飛び出るといった症状も現れることがあります。
さらに、腫瘍が脳を圧迫すると、発作や行動の変化などの神経症状が見られることがあります。
鼻腔内腫瘍が疑われる場合は麻酔をかけた状態でCT検査を行い、腫瘍の存在や範囲、さらに脳や眼球など周辺組織への圧迫具合を確認します。
また、CT検査で腫瘍の存在が明らかになった場合には、腫瘍の種類や悪性度を判定するために、腫瘍の一部を切り取って病理検査で詳しく調べる必要があります。
現在、犬の鼻腔内腫瘍に対して推奨されている治療法は放射線療法です。
鼻腔内腫瘍のほとんどが悪性で、周囲の組織に広く浸潤していることが多いため、外科手術を行う場合でも、その後に放射線療法や抗がん剤治療が必要となります。
鼻腔内腫瘍は鼻の内部にできるため、鼻が盛り上がったり、目が飛び出たりすることがありますが、飼い主様が気づくほどの症状が現れるのはかなり進行してからです。
早期に発見できれば治療に良い反応をすることもありますが、末期になるとそのまま悲しい別れとなってしまうこともあります。
初期には鼻炎のような症状が現れるため、鼻水が続く、症状が悪化するようであれば、早めに動物病院にご相談ください。
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<参考文献>
Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 2020. 緑書房.