骨肉腫は骨にできる悪性腫瘍(がん)の一つで、大型犬や超大型犬に多く見られます。診断時には、多くのケースですでに肺などに転移していることがわかっており、たとえ画像診断で転移が確認できなくても、その可能性を前提に治療を進める必要があります。
骨肉腫の犬に対する治療には、原発巣の切除(場合によっては断脚も含む)、放射線療法、抗がん剤、そして痛みの緩和が含まれます。
今回は犬の骨肉腫について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.原因|大型犬・超大型犬での発生が多い
2.症状|足をかばう、痛がる、腫れる
3.診断|レントゲン検査、CT検査、細胞診、組織生検など
4.治療|転移を前提に治療方針を考える
5.予防|大型犬・超大型犬の飼い主様は注意
原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のような大型犬や超大型犬に多く見られることから、遺伝的な要因が関係していると考えられています。
・セント・バーナード
・ドーベルマン
・グレート・デーン
・ロットワイラー
・ジャーマン・シェパード
・ゴールデン・レトリーバー
特に中高齢の犬に多い傾向がありますが、2歳以下の若い犬でも発症することがあります。
主に四肢(手足)の骨に発生し、前足では手首や肩関節付近、後ろ足では膝や足首付近で発生することが多くあります。それ以外にも、頭の骨や肋骨にできることもあります。
発生部位には強い痛みが生じます。手足の骨に発生した場合、触ると痛がったり、患部が腫れたり、不自然な歩き方をしたりします。脊椎に発生した場合は、麻痺が生じることもあります。
骨肉腫は非常に転移しやすい悪性腫瘍で、特に肺への転移が多く見られます。この場合、犬は息苦しそうにしたり、咳をしたりすることがあります。
犬種や年齢、発生部位、レントゲン検査などの画像診断、細胞診、組織生検などの結果を総合して診断します。
レントゲン検査では、骨の融解や増殖などの異常が見られることがあります。確定診断には組織生検が必要で、専用の針を用いて患部の骨を一部採取し、検査します。
また、骨肉腫は転移が多いため、全身の検査も必要です。特に肺転移が多いので、CT検査などを含めて詳細に評価を行います。
骨肉腫は転移が非常に多いため、転移を前提に原発巣である骨の治療と転移巣の治療を並行して考える必要があります。
根治を目指せる場合は、原発巣の治療として外科的に患部を切除する手術を行います。四肢に発生した場合は、断脚術がこれに該当します。術後は足が1本ない状態での生活になりますが、体重が重過ぎない限り、日常生活程度の運動は可能です。
また、検査で検出されなかったとしても微小な転移巣がある可能性が高いため、抗がん剤による全身治療も行います。
発見時にすでに肺病巣があり、全身状態が悪いなど根治が望めない場合は、疼痛を緩和するための鎮痛剤投与や放射線治療を検討することもあります。
予後については、小型〜中型犬は大型犬よりも良い傾向にあります。なお、肩関節付近の骨肉腫が最も予後が悪いとされています。
原因が明確ではないため予防はできませんが、早期発見と早期治療が非常に重要です。足の痛みがあるときに鎮痛剤のみで様子を見ると、その間に病気が進行してしまう危険性があります。異常が見られる場合は、すぐに獣医師に相談し、必要な検査を受けることをお勧めします。
愛犬の健康を守るためには、日常の観察と早めの対応が大切です。気になる症状があれば、早めに動物病院に相談してみましょう。
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<参考文献>
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