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犬の上皮小体腫瘍について|突然多飲多尿に!上皮小体腫瘍ってどんな病気?

2024.05.10
犬の病気

上皮小体は喉の近くにある小さな臓器で、血液中のカルシウム濃度を調節する「パラソルモン」という重要なホルモンを分泌しています。
この上皮小体に腫瘍ができると、ホルモンが過剰に分泌され、高カルシウム血症やそれに伴う様々な症状が現れることがあります

上皮小体腫瘍の主な治療法は外科手術です。手術で腫瘍を取り除きますが、術後にはカルシウムが不足しやすい状態になることもあるため、慎重なフォローアップが必要です。また、上皮小体は非常に小さいため、手術前にはCTスキャンなどの精密な画像検査を行い、正確な位置を特定することが大切です。

今回は犬の上皮小体腫瘍について、症状や治療方法などを解説します。

■目次
1.原因|加齢により発生が増える
2.症状|多飲多尿、嘔吐、ふるえなど非特異的な症状を見せる
3.診断|ほかの原因を排除したうえでCTによる精密な画像診断
4.治療|外科手術が第一選択。術後の管理も重要
5.予防|日々の観察と定期的な健康診断が早期発見につながる

原因|加齢により発生が増える


上皮小体腫瘍のはっきりとした原因はまだ解明されていません。しかし、特に中高齢の犬において時々見られるため、年齢が上がるにつれて細胞の異常が増加し、腫瘍が発生しやすくなると考えられています。

上皮小体腫瘍の約80%以上は良性の腫瘍(腺腫)ですが、ごくまれに悪性の腫瘍(腺癌)である場合もあります。

 

症状|多飲多尿、嘔吐、ふるえなど非特異的な症状を見せる


上皮小体腫瘍があるとパラソルモンが過剰に分泌され、その結果として持続的な高カルシウム血症陥ります。

この状態で主に見られる症状は以下の通りですが、これらは上皮小体腫瘍特有のものではなく、他の疾患でも同様の症状が出ることがあります。そのため、他の病気との正確な鑑別診断が非常に重要になります。

・多飲多尿
・食欲不振
・嘔吐
・下痢または便秘
・震え
・膀胱結石

さらに、パラソルモンは骨のカルシウムが血中に溶け出すよう促すため、骨が弱まり(骨粗鬆症)、骨折しやすい状態になります。

 

診断|ほかの原因を排除したうえでCTによる精密な画像診断


上皮小体腫瘍に診断では、同じ症状を見せる他の疾患との鑑別のために、複数の検査を組み合わせて総合的な診断を行います。

<血液検査>
カルシウム、リン、パラソルモンのレベルを測定するために行われます。上皮小体腫瘍の場合、通常、血中カルシウム値が高く(高カルシウム血症)、リン値が低下することがあります。

<尿検査>
尿検査を通じて、カルシウムの尿中排泄量を評価します。カルシウムとクレアチニンの尿中比率を測定し、腎臓がどの程度カルシウムを処理しているかを判断するのに役立ちます。

<画像診断>
超音波検査上皮小体の位置やサイズを調べ、腫瘍の存在や異常な増大を検出します。
レントゲン検査骨の状態をチェックし、上皮小体腫瘍による長期的な高カルシウム血症が骨をどの程度脆弱にしているかを評価します。
CT検査:上皮小体は米粒ほどの小さな臓器なので、診断ではCT検査による精密な画像診断が重要になります。

最終的には外科手術で摘出した組織を検査することで、腫瘍が良性か悪性か、その悪性度を確定します。

 

治療|外科手術が第一選択。術後の管理も重要


上皮小体腫瘍の治療には、上皮小体を外科手術で摘出する方法が最も一般的です。手術後、摘出した上皮小体を組織検査に提出します。

しかし、すべてのケースで手術が適用可能とは限らず、手術に適さない場合や上皮小体の活動を抑制する必要がある場合は、カルシウム濃度を下げる薬剤による治療が選ばれることもあります。
また、手術後には低カルシウム血症を発症するリスクが高まるため、治療後しばらくは入院して、血液検査でカルシウム濃度を測定しながら慎重に管理します。
腫瘍が取り切れて血中カルシウム濃度が安定すれば、予後は良好です。

 

予防|日々の観察と定期的な健康診断が早期発見につながる


上皮小体腫瘍は原因がはっきりわかっていないため、予防法がありません。
症状が特異的でなく、また非常に小さい臓器であるため、発見が遅れがちですが血液検査での高カルシウム血症から早期に発見できることもあります。

特に高齢犬ではこの病気が増える傾向にあるため、高齢犬と暮らしている飼い主様は、日頃から愛犬の様子を注意深く観察し、定期的な健康診断を受けることで病気の早期発見に努めることが大切です。

■関連する病気はこちらで解説しています
上皮小体機能亢進症
犬と猫の上皮小体機能亢進症について│無症状のことも多く、血液検査で偶然見つかることも・・・

 

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<参考文献>

Feldman EC, Hoar B, Pollard R, Nelson RW. Pretreatment clinical and laboratory findings in dogs with primary hyperparathyroidism: 210 cases (1987-2004). J Am Vet Med Assoc. 2005 Sep 1;227(5):756-61.

 

 
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