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犬の成長板早期閉鎖について|成長期に骨が曲がる病気

2024.07.16
犬の病気

成長板は骨の両端にある軟骨で、成長期の動物においてこの部分の軟骨細胞が骨に変わることで骨が伸びていき、成長期が終わると成長板自体が骨に変わります。
成長板早期閉鎖は、その名の通り成長板が他の骨の成長板よりも早く役目を終えてしまう病気です。その結果、成長板が他の骨に比べて短くなり、治療をしないと骨格の異常が生じ、歩行が困難になる可能性があります。

この病気の治療としては通常よりも短い方の骨を切り、バランスよく骨を成長させるための矯正骨切り手術を行います。

今回は犬の成長板早期閉鎖について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。



■目次
1.原因|骨折や遺伝、栄養障害
2.症状|骨が変形して歩行障害や歩行時の異音が起こる
3.診断|身体検査とレントゲン検査
4.治療|外科手術で短い方の骨を切り、矯正する
5.予防|早期に発見し、成長期に治療をする

 

原因|骨折や遺伝、栄養障害


骨折などの怪我によって成長板が傷ついた場合や、成長期に十分な栄養が得られなかった場合など、成長板早期閉鎖の原因はさまざまです。また、遺伝的な要因もこの病気の一因と考えられています。

特に、ミニチュア・ダックスフンドウェルシュ・コーギーなどの軟骨異栄養犬種では、遺伝的にこの病気が発生しやすいと言われています。

 

症状|骨が変形して歩行障害や歩行時の異音が起こる


犬の成長板早期閉鎖は、前足の骨(橈骨・尺骨)での発生が多いとされています。
橈骨と尺骨は前足の肘から手首までの間にある細い骨で、どちらか片方(通常は尺骨)で成長板早期閉鎖が起こると、もう片方が引っ張られて変形してしまいます。

このため、犬は歩行時に痛みを感じたり、前足が曲がって見えたりします。
さらに、肘の関節に負担がかかるため、肘関節形成不全を引き起こしやすくなります。

 

診断|身体検査とレントゲン検査


成長板早期閉鎖は、身体検査とレントゲン検査で診断します。
レントゲン検査では、正常な足と異常な足を比較し、橈骨の湾曲や尺骨の短縮などの異常を確認します。

 

治療|外科手術で短い方の骨を切り、矯正する


短い骨を切り、元の位置より少し離れた位置で固定することで、骨が修復される際に2つの骨をバランスよく成長させることができます(矯正骨切り固定術)。成長期の子犬では骨の修復が早いため、早期発見と早期治療が重要です。

成犬であっても矯正骨切り固定術の適応となる場合もありますが、状態によっては鎮痛剤などによる疼痛管理で経過を見る場合もあります。

 

予防|早期に発見し、成長期に治療をする


遺伝が原因の場合は予防は難しいですが、特にミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーと暮らす飼い主様は、子犬の時期から歩き方や前足の長さなどをよく観察し、異常があれば早めにご来院いただくことが大切です。

成長期の子犬は骨の癒合が早く、治療の選択肢も多いため、早期発見と早期治療が重要です。外傷や骨折、栄養障害も原因となることがあるため、適度な運動と十分な栄養を与えることは忘れないでください。

また、足に強い衝撃を与えないように注意し、段差にはスロープを設置し、激しいジャンプなどは控えるようにしましょう。

 

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<参考文献>

Christopher S. Short term outcomes and complications of distal ulnar ostectomy in 23 juvenile dogs with carpal valgus secondary to discordant radial-ulnar physeal growth. Front Vet Sci. 2022 Sep 9;9:971527.

Loewen KG, Holmberg DL. Surgical management of premature closure of the distal ulnar growth plate in a growing dog. Can Vet J. 1982 Apr;23(4):113-6.

 
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