犬や猫の耳がぷっくり腫れている、触ったらなんだか熱っぽい……それは耳血腫かもしれません。
耳血腫は耳介(外から見える耳)をつくる耳介軟骨と皮膚の間に血が溜まる病気です。
溜まった血を抜いて投薬してもすぐに血が溜まって再発してしまうことがあり、手術が必要なケースも少なくありません。
今回は、犬や猫の耳が急に腫れるこの病気について、原因や症状、治療法、手術などについて解説します。
目次
1.原因|多くは外耳炎など耳の病気や外傷
2.症状|耳介がパンパンに腫れる
3.診断|ほとんどは視診や触診で判断できる
4.治療|溜まっている血液を抜いて内科治療。繰り返す場合は手術も
5.予防|外耳炎の予防と早期治療。猫は外に出さない
耳血腫は、耳介軟骨と皮膚の間にある血管が破れて、血が溜まることで起こります。
血管が破れる理由はさまざまありますが、多くは耳を何度も掻く、床に擦り付ける、振るなど、耳に繰り返し刺激が与えられることにより耳血腫が発生すると考えられています。
このため、外耳炎を併発することがよくあります。
また、怪我やケンカなどが原因になることもあります。
耳血腫では耳介がパンパンに腫れます。
腫れた耳介には血が溜まっているため、固めの水風船のような感触で、熱をもっています。
耳に痛みや違和感があるので、しきりに耳を気にして掻いたり、耳を振ったり、触られるのを嫌がったりします。
外耳炎を伴う場合は、耳垢が増え、耳が臭いなどの症状もみられます。
症状は片側のみに起こることがほとんどです。
耳血腫は、症状が特徴的なので、見た目と感触でほとんど判断できますが、外耳炎など耳の病気を伴っていることが多いため、耳鏡で耳道を観察し、耳垢の検査も行います。
また、腫れている部分に針を刺して、溜まっている液体を確認します。
耳血腫の治療には内科治療と外科治療があります。
軽度であれば内科治療として、耳介に溜まった液を抜いて、抗菌剤やステロイドなどで治療をします。
ほとんどのケースでは、液が再び溜まり、溜まる量が少なくなるまで何度も液を抜く処置を行います。
外耳炎など耳の病気を併発している場合は、その治療も並行します。
外科治療(手術)では、耳介に切り込みを入れて液を外に出したうえで、腫れた耳介を縫い合わせて膨らまないようにします。
排液のためにドレーンを設置することもあります。
手術は全身麻酔のリスクがありますが、繰り返し液を抜く必要がなく、再発リスクが内科治療よりも低いというメリットがあります。そのため、当院では耳血腫が起こった時点で外科治療を選択することをおすすめしています。
外耳炎などの耳の病気が原因で耳血腫になることがあるため、耳の病気は悪化しないうちに早めに治療することが重要です。
また、外耳炎などの予防として、定期的に耳をケアするのも良いでしょう。
また他の犬や猫とケンカして傷を負うなどないよう、室内飼育を徹底しましょう。
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<参考文献>
Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 耳の手術. In: 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. 緑書房.