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犬の被嚢性腹膜硬化症について|犬では非常に珍しい病気

2023.12.21
犬の病気

被嚢性腹膜硬化症は、硬く、分厚くなった腹膜が腸などを包んで癒着(くっついて)してしまう病気で、ヒトでは腹膜透析の重要な合併症として知られています。

犬では避妊手術など開腹手術の際に偶然発見されることがありますが、報告が少なく、診断や治療、予後などの明確な基準がまとまっていません。

今回は犬の希少病とも言われる被嚢性腹膜硬化症について紹介します。

■目次
1.原因|非常に珍しい病気で原因はよくわかっていない
2.症状|無症状から嘔吐や下痢など消化器症状まで
3.診断|画像検査で発見されることもあるが、診断は難しい
4.治療|ステロイドの投与や手術など
5.予防|早期に発見できれば助かる見込みも

原因|非常に珍しい病気で原因はよくわかっていない


被嚢性腹膜硬化症は、犬では非常に珍しい病気で、国内外の報告が少なく、現段階では起こりやすい年齢、犬種などについて、よくわかっていません
原因としては、誤嚥した異物による胃や腸の穿孔(粘膜に穴が開くこと)や、腹膜炎、感染症、肝硬変なども疑われています。

 

症状|無症状から嘔吐や下痢など消化器症状まで


硬くなった腹膜と腸の癒着具合によって、腸の動きが悪くなったり、腸閉塞を起こしたり、低栄養状態になったりするため、元気・食欲・体重の低下、嘔吐、下痢、便秘、お腹が張る、お腹を痛そうにするなどの症状が見られることがあるようです。

ただし無症状で、避妊手術など開腹手術でお腹を開けたときに偶然見つかるケースも多いようです。

 

診断|画像検査で発見されることもあるが、診断は難しい


診断基準が定まっていないため手術前の診断は難しいとされていますが、超音波検査やレントゲン検査、CT検査などで、数は少ないものの、術前に発見されたという例もあり、画像検査の有用性が期待されています。

また、似た症状を示す病気がたくさんあり、誤診されることの多い病気ですので、慎重な判断が必要です。

 

治療|ステロイドの投与や手術など


症例が少ないため治療法も確立されていません。

腹膜と腸の癒着が軽度で、外科手術で癒着して壊死した腸ごと切除できた例では、良好な予後が得られたという報告もありますが、すでに患部が広がっていて、腸と強く癒着している場合は、外科手術での治療が難しい場合もあるようです。

腸に癒着した腹膜を剥がす際、腸に穴が開くと安楽死せざるを得ないことが多く、手術自体の成功率はあまり高くないようです。

内科治療としては、免疫介在性疾患との関連が疑われているため、ステロイドを使用した治療例が報告されています。

 

予防|早期に発見できれば助かる見込みも


原因がわかっていないため、予防法は確立されていません。

診断も治療も難しい病気ですが、初期段階と思われる癒着の激しくない症例において、手術後の予後が良好であったという報告もあるため、早期に発見することは重要でしょう。


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<参考文献>
Etchepareborde S, Heimann M, Cohen-Solal A, Hamaide A. Use of tamoxifen in a German shepherd dog with sclerosing encapsulating peritonitis. J Small Anim Pract. 2010 Dec;51(12):649-53.
Hardie EM, Rottman JB, Levy JK. Sclerosing encapsulating peritonitis in four dogs and a cat. Vet Surg. 1994 Mar-Apr;23(2):107-14.
Izawa T, Murai F, Akiyoshi H, Ohashi F, Yamate J, Kuwamura M. Encapsulating peritoneal sclerosis associated with abnormal liver development in a young dog. J Vet Med Sci. 2011 May;73(5):697-700.

 
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