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犬の消化管間質腫瘍(GIST)について|黒い便が出たらすぐに受診を

2024.02.26
犬の病気

消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の粘膜下に発生する悪性腫瘍(がん)であり、以前は別の腫瘍と認識されていましたが、最近になって新たに分類された診断名です。
主に大腸や小腸、胃で発生が報告されており、特に盲腸での発生が多いと報告されています。
治療に関しては、外科手術による腫瘍の切除が必要であり、さらに、内科治療として分子標的薬の使用も検討されることがあります。

今回は犬の消化管間質腫瘍について、症状や治療方法などを詳しく解説します。

■目次
1.原因|消化管の動きを調節する細胞が腫瘍化する
2.症状|嘔吐、貧血、食欲不振、体重減少など
3.診断|CTを含めた画像診断と手術で摘出した腫瘍の病理検査
4.治療|外科手術。術後には分子標的薬による内科治療も
5.予防|繰り返す消化器症状に注意!

 

原因|消化管の動きを調節する細胞が腫瘍化する


GISTは、消化管の動きを調節するカハール介在細胞が腫瘍化したものであり、この腫瘍化はカハール介在細胞の表面にあるタンパク質をコードするc-kit遺伝子の突然変異が関与していると考えられています。
しかし、根本的な原因についてはまだよくわかっていません

 

症状|嘔吐、貧血、食欲不振、体重減少など


GISTは様々な症状を引き起こすことがありますが、これらの症状は腫瘍の位置や大きさ、さらには腫瘍がどの程度進行しているかによって異なります。

主な症状には嘔吐、貧血、食欲不振、体重減少などがあり、特に消化管内で出血が発生すると、黒い便が出る、嘔吐物や便に血が混ざることがあります。
しかし、腫瘍が小さい場合には症状が現れないこともあり、他の検査を通じて偶然に発見されることも少なくありません。

病気が進行した場合には、腸に穴が開き、腸の内容物が腹腔内に漏れ出ることで、腹膜炎を引き起こすことがあります。
このような状態は非常に重篤で、迅速な治療が必要となります。



診断|CTを含めた画像診断と手術で摘出した腫瘍の病理検査


診断に際しては、消化器症状を引き起こす他の病気との鑑別が必要となり、検査結果が出るまでの間、対症療法による経過観察が行われることもあります。

慎重な観察のために、超音波検査や造影剤を用いたレントゲン検査、CT検査を含む画像診断が行われ、転移の有無も含めて診断が進められます。
加えて、全身の状態を確認するための血液検査も重要であり、GISTの場合は低アルブミン血症になっている場合も多く見られます。

また、腫瘍の存在が画像診断で確認された場合、超音波ガイド下で腹部に針を刺し、針吸引細胞診(FNA)を行うこともありますが、この手法には出血や腫瘍部分に穴が開くリスクも伴います。

さらに、腫瘍の種類や悪性度を正確に診断するためには、外科手術による腫瘍の切除と、その後の病理検査が必要です。



治療|外科手術。術後には分子標的薬による内科治療も


治療の基本は外科手術による腫瘍の切除です。
この手術では、腫瘍が発生している小腸、大腸、または胃の一部を切り取り、その後、健康な部分同士を繋げることで消化管を回復させます。
手術後には、切除された腫瘍を病理検査にかけることで、腫瘍の種類や悪性度を明らかにし、適切な治療方針を決定するための重要な情報を得ます。

術後の治療としては、分子標的薬の投与が行われ、これによって再発の防止を目指します。
さらに、転移が既に存在する場合や、何らかの理由で手術が困難な場合にも、分子標的薬による内科治療が選択されます。


予防|繰り返す消化器症状に注意!


発生原因がまだ完全には解明されていないため、具体的な予防法を定めることは難しい状況です。
しかし、転移がなく腫瘍も小さい場合には、外科手術による根治が可能です。

このことから、GISTは大きくなるまで症状が現れないことが多いため、定期的な健康診断が非常に重要となります。
早期発見と早期治療が、GISTに対する最も効果的な対策であるため、愛犬の健康状態に注意を払い、定期的な検査を受けることを心がけましょう。



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<参考文献>
Frost D, Lasota J, Miettinen M. Gastrointestinal stromal tumors and leiomyomas in the dog: a histopathologic, immunohistochemical, and molecular genetic study of 50 cases. Vet Pathol. 2003 Jan;40(1):42-54. 
衛藤翔太郎, 谷健二, 石井遙ら. 犬の消化管間質腫瘍 (GIST) の臨床的特徴と c-kit 遺伝子変異. 日本獣医麻酔外科誌. 47(3): 39-46. 2016.

 
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