血管肉腫は血管を構成する血管内皮細胞の悪性腫瘍(癌)です。
非常に悪性度と転移率が高い癌で、犬では脾臓での発生が多く、ほかにも心臓や皮膚などでも起こります。
治療には早期発見・治療が何より重要ですが、皮膚にできるもの以外は普段の犬の様子から血管肉腫を発見することは難しいため、定期的な検診が肝心です。
■目次
1.原因|高齢の大型犬に多い
2.症状|発生部位で症状は異なる。脾臓の腫瘍が破裂すると急変
3.診断|画像診断や血液検査
4.治療|QOLを高める緩和治療がメイン
5.予防|定期的な検診で早期発見を
原因はよくわかっていませんが、他の腫瘍と同じく、高齢での発生が多いようです。
犬種では、ジャーマン・シェパード・ドッグやイングリッシュ・ポインター、ゴールデン・レトリーバーなどといった大型犬に多いと言われています。
血管肉腫は、どこに発生したかで症状が異なります。
脾臓の血管肉腫では脾臓が大きく腫れ、お腹に水がたまって膨らみます。また、嘔吐や下痢、食欲不振、体重減少などが見られることもあります。
脾臓が破裂した場合は、お腹の中で大量に出血することでショック症状を示し、そのまま亡くなってしまうことも少なくありません。
皮膚の血管肉腫は、皮膚が分厚くなったり、潰瘍ができたり、ぼこぼこしたりするため、見た目でわかりやすいでしょう。
心臓に発生した場合は、不整脈や心不全から、動きたがらない、すぐに疲れるなど、心臓病と似た症状が現れます。
ほかにも、貧血や止血異常(出血が止まらなくなること)が見られることもあります。
脾臓や心臓といった内臓にできた場合は、超音波検査で位置や大きさが確認できます。
また、血管肉腫によって脾臓が大きくなっている場合は、レントゲンで大きくなった脾臓を確認できます。レントゲンでは、転移の確認も行います。
血液検査では、白血球数の増加や貧血、赤血球の変形などが見られます。
確定診断のためには、外科手術で摘出した腫瘍組織を病理検査にかける必要があります。
脾臓に血管肉腫が発生している場合は破裂する危険性があるため、一般的には外科手術で脾臓を摘出します。しかし、肺などに転移があり、全身状態が良くないなど、予後が限られているケースでは、QOLを高めるために手術を行わず、症状を緩和する治療を行います。
ただし、脾臓が破裂して重篤な状態になっている場合や、播種性血管内凝固を起こしている場合は、緊急的に外科手術で腫瘍を取り除くことがあります。
手術後も転移や再発のリスクがあるため、抗がん剤治療を行いますが、残念ながら生存率はあまり高くありません。
なお、皮膚の血管肉腫は他と比べて悪性度が低く転移が多くないため、手術が有効なケースもあります。
犬の血管肉腫は、皮膚にできるもの以外は非常に悪性度と転移率が高く、治療をしても長くは生きられない病気です。
内臓にできるものは早期に発見することが難しいため、定期的な検診をお勧めします。
光が丘動物病院グループ
東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
■分院名をクリックすると各院のページに遷移します
<参考文献>
Kim JH, Graef AJ, Dickerson EB, Modiano JF. Pathobiology of Hemangiosarcoma in Dogs: Research Advances and Future Perspectives. Vet Sci. 2015 Nov 6;2(4):388-405.
Epidemiological, Clinical and Pathological Features of Primary Cardiac Hemangiosarcoma in Dogs: A Review of 51 Cases – PMC (nih.gov)