外鼻孔狭窄症は、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズなど短頭種の犬によく見られる病気です。
これらの犬種は生まれながらにして鼻の穴が狭く、呼吸に影響を与えることがあります。
軟口蓋過長症や喉頭虚脱、気管形成不全など、他のいくつかの呼吸器疾患と共に、短頭種気道閉塞症候群を引き起こす原因の1つとされています。
手術により外鼻孔を広げることで治療できますが、外鼻孔狭窄症の犬は麻酔のリスクが高いため、より安全に治療を進めるためにも若い時期での手術をお勧めします。
今回は犬の外鼻孔狭窄症について症状や治療方法などを解説します。
■目次
1.原因|短頭種に先天的に多い
2.症状|鼻の穴がつぶれている。口で荒い呼吸をする、いびき
3.診断|目視で診断可。ただし併発疾患の診断が重要
4.治療|外科手術で鼻の穴を広げる
5.より安全な手術を行うためにも早い段階での治療が重要
外鼻孔狭窄症は、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストンテリア、ペキニーズなどの短頭種の犬に見られる先天的な病気です。
これらの犬種は、生まれながらにして鼻の穴の構造に特異性があり、呼吸に関わる問題を抱えやすくなっています。症状は早い場合で生後2、3ヶ月から見られることがあります。
肥満もこれらの症状を引き起こしたり悪化させたりする要因となり得るため、愛犬の体重管理には特に注意が必要です。
外鼻孔狭窄症は以前、こちらのブログでも紹介した短頭種気道閉塞症候群の原因の1つであり、短頭種の犬は軟口蓋過長症や喉頭虚脱、気管形成不全など、複数の呼吸器系の病気を併発している場合が多くあります。
犬の短頭種気道閉塞症候群についての記事はこちら
外鼻孔狭窄症を抱える犬は、通常ならば広く空いているはずの鼻の穴が狭くなっています。
これにより、鼻呼吸がしにくく口呼吸をしがちで、息が荒く、いびきのような呼吸音が常に聞こえます。いびきのような呼吸音は、軟口蓋過長症を併発していると、より顕著になります。
この症状が進行すると酸欠状態に陥り、その結果として舌が青ざめ(チアノーゼ)、失神を起こすなどの様子が見られることもあります。
このような症状は生まれつきのものであるため、子犬の時期に発見されることが多くあります。
さらに、外鼻孔狭窄症は呼吸に関わる症状だけではなく、嘔吐や頻繁なオナラなどの消化器系の症状を引き起こすこともあります。また、熱を効果的に放散できないため、熱中症になるリスクも高くなります。
外鼻孔狭窄症は、特定の犬種や鼻の外見、呼吸音などを観察することで診断が可能です。
呼吸音は、犬が常にガーガーという音を立てているのか、それとも興奮した時だけか、あるいはいびきをかいているだけなのか、さらには睡眠中に呼吸が止まることがあるのかなど、様々な状況下での呼吸の様子を確認します。
また、軟口蓋過長症など他の呼吸器系の疾患が併発していることも多いため、胸部のレントゲン検査を含む、より詳細な診断が必要になることがあります。
治療方法は、症状の重さや全体の健康状態によって異なります。軽度の症状であれば、積極的な治療を必要としない場合もありますが、症状が犬の日常生活に大きな影響を与えている場合は、手術が考慮されることがあります。
手術では鼻を塞いでいる部分を切除し、鼻の穴を広げることで呼吸を楽にします。
また、呼吸や消化器系に関連する症状が見られる場合には、手術前に一時的に内科的治療を行うこともありますが、基本的には外科手術によって鼻の穴を広げる以外にこの病気を治す方法はありません。
軟口蓋過長症など他の呼吸器系の疾患を併発している場合には、それらの疾患に対する手術も同時に行われることがあります。
外鼻孔狭窄症のような先天性の呼吸器系疾患を抱える犬は、麻酔によるリスクが高まるため、少しでも若い時期での手術をお勧めしています。
外鼻孔狭窄症は先天性の疾患であるため、残念ながら完全に予防することはできません。
この病気を持つ犬は麻酔のリスクが高いため、将来的に中高齢になって他の病気で手術が必要になった際に備え、若くて健康なうちに治療を行うことが重要です。
また、肥満は呼吸困難をさらに悪化させる可能性があるため、適切な体重管理にも気を配る必要があります。
外鼻孔狭窄症はフレンチ・ブルドッグやパグなどの短頭種に多い病気ですので、短頭種と暮らしている飼い主様は一度獣医師の診察を受けることをお勧めします。
■当院の関連する病気はこちらで解説しています。
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<参考文献>
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Stefanie Mitze, Vanessa R Barrs, Julia A Beatty, Stefan Hobi, Paweł M Bęczkowski. Brachycephalic obstructive airway syndrome: much more than a surgical problem. Vet Q. 2022 Dec;42(1):213-223.