鼻咽頭ポリープは、中耳にできたポリープが鼻咽頭部まで広がった病気です。
猫でときどきみられ、鼻からズーズーとイビキのような呼吸音、鼻水などの症状が現れます。
鼻咽頭ポリープの治療には手術でポリープを切除する必要があり、手術の方法はポリープのできた部位や大きさによって異なります。
今回は、猫の鼻咽頭ポリープについて解説していきます。
■目次
1.原因|若い猫での発生が多い
2.症状|イビキのような呼吸音や耳を気にする様子
3.診断|内視鏡やCT検査が必要
4.治療|手術でポリープをとる
5.予防|若い猫でイビキ呼吸などが続く場合は注意!
若い猫(2歳未満)での発生が多いことから、先天的(生まれつき)な素因が疑われています。
慢性の外耳炎や中耳炎などの炎症が要因になっている可能性も考えられますが、はっきりとしたことはわかっていません。
中耳で発生したポリープが鼻側に大きくなるのか、外耳側に大きくなるのかで症状が異なります。
鼻側に大きくなった場合は、呼吸や嚥下(食べ物を飲み込む動き)を妨げます。
イビキのようにズーズー、ブーブーと呼吸をしたり、息苦しそうになったり、鼻水やくしゃみが出たり、飲み込みにくそうにしたりします。
一方、外耳に向かって大きくなった場合は、耳から茶色い液や膿が垂れたり、耳を気にして頭を振ったりなど、外耳炎の症状が現れます。
また、耳が聞こえにくくなることもあります。
耳は平衡感覚も司っているため、頭が傾いたり、歩くときにふらついたり、目が一定のリズムで揺れる眼振を起こしたりします。
ほか、体重が増えない、毛艶が悪いといった軽微な変化や、呼吸困難や嚥下困難といった重度な異常を起こすこともあります。
外耳道にポリープがある場合は、診察時に耳鏡でポリープを観察できることもあります。
鼻咽頭部のポリープは、大きければ猫の口を大きく開けさせれば見えますが、基本的には直接観察することは難しいため、全身麻酔をかけて内視鏡で観察します。
CT検査では中耳との関連など、精密に確認できます。
手術でポリープを切除します。
口の中からアプローチできる場合は内視鏡でポリープを切除できますが、ポリープが外耳側にも伸びている場合は耳側から切除します。
手術後は、切除したポリープを検査機関に提出し、病理組織検査を行います。
鼻咽頭ポリープは炎症由来のポリープで、悪性腫瘍ではないため、完全に切除できれば一般的には術後は良好です。
原因がよくわかっていないため、予防法はありません。
鼻咽頭ポリープは、内視鏡検査やCT検査など精密検査なしでは発見が難しいため、気づいたときにはすでに数年が経過していることがよくあります。
イビキ呼吸など、疑わしい症状が続く場合はこの病気の可能性がありますので、精密検査をお勧めします。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
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Richard G.Harvey, Gert ter Haar. 外耳炎の病因と病態. In: 犬と猫の耳鼻咽喉疾患. 嶋田照雅 監訳. pp.128-177. 緑書房.