猫の口の中にできる腫瘍はほとんどが悪性(癌)で、なかでも多いのが口腔内扁平上皮癌(こうくうないへんぺいじょうひがん)です。
口腔内扁平上皮癌は進行スピードが早く、口の中の炎症病変によって腫瘍かどうかが判断しにくいので、発見時にはすでに手遅れになっていることも少なくありません。
そのため、今回ご紹介する症状をおさえていただき、ちょっとでも猫に異変を感じたら、お早めに診察にいらしてください。
■目次
1.原因|高齢猫での発生が多い
2.症状|舌や歯茎のできもの、喉の腫れ。よだれが出て食べにくそうなど
3.診断|病理組織検査が必要。適切な治療のためには詳細な画像診断も
4.治療|外科手術が第一選択だが、進行していると根治が困難
5.予防|普段から口の中をよく観察して早期発見を
およそ10歳以上での発生が多く、ほかの腫瘍と同様に加齢とともにリスクが高まると考えられていますが、若くても発生することはあります。
また、最近わかってきたことですが、タバコの受動喫煙によって発生リスクが2.3倍に上がると言われているため、猫が過ごす室内で飼い主様が喫煙することは原因のひとつでもあるようです。
口腔内扁平上皮癌を含め、口腔内の腫瘍はある程度の大きさにならないと症状は現れません。
腫瘍は舌にできることが多いものの、歯茎や喉元、口蓋、頬などにできることもあります。
腫瘍の存在は、普段から口の中を観察する機会の多い飼い主様でなければ、小さいうちは気付かないことがほとんどです。
ある程度の大きさになると、よだれが増え、口が臭くなり、歯が抜けたり、痛みが出たり、腫瘍から出血したりします。
また、腫瘍の場所と大きさによっては、食べ物を飲みこめなくなったり、顔のかたちが変わったりします。
これらは歯周病などの腫瘍以外の病気と似た症状ですが、口腔内扁平上皮癌は進行スピードが早いため、様子をみていると手遅れになってしまうかもしれません。
口腔内にできる腫瘍はどれも似ているため、診断には腫瘍を切り取って病理組織検査にかける必要があります。
このため外科手術が必要ですが、手術の前にはレントゲン検査やCT、MRIなど詳細な画像診断で、腫瘍がどこまで広がっているかを確認します。
外科手術で腫瘍を切除することが第一選択ですが、すでに骨や周辺の組織に広がり、手術では取りきれないケースもあり、放射線治療を併用することもあります。
飼い主様が手術を希望されない場合は、痛み止めや胃瘻チューブの設置など、少しでも体の状態が楽になるような治療をご提案することもあります。
ただし、口腔内扁平上皮癌は予後がとても悪いことが知られているため、進行しているとあまり長くはもたないでしょう。
口腔内扁平上皮癌は、発見時にはすでに治療ができないほど悪い状態になっていることも少なくありませんが、早期に発見できれば、そのような事態も防ぐことができます。
歯磨きなどを通して普段から口の中をよく観察し、食べ方など異変がみられたらお早めにご来院ください。
また、タバコも発生リスクを上げる原因と考えられていますので、猫が過ごす部屋での喫煙は避けることを強くお勧めします。
光が丘動物病院グループ
東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
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