肛門周囲腺腫は、去勢をしていないオスの犬でしばしば見られる良性腫瘍です。
肛門周囲腺と呼ばれる肛門の周囲にある皮脂腺が腫瘍性に増殖する病気で、尾の付け根や包皮など、肛門の周囲以外にも発生します。
肛門周囲腺腫は良性腫瘍なので転移はしませんが、次第に大きくなることもあり、さらには悪性腫瘍との見分けが難しいため、腫瘍が小さいうちに対応した方が良い病気です。
肛門周囲腺腫の発生には男性ホルモンが関与していると考えられているため、未去勢の中高齢(6歳以上)のオスで多く見られます。
肛門周囲には皮脂腺がたくさんあるため、しばしば複数箇所に発生します。
肛門の周りや、包皮、尾の付け根などにイボのようなできものができ、腫瘍はだんだん大きくなります。
場所や大きさによってはうんちが出にくくなったり、出血したり、膿んでしまうこともあります。
良性腫瘍なので転移はしませんが、見た目では悪性腫瘍と区別がつかないので、早めに対応した方が良いでしょう。
肛門の周囲にできる腫瘍には、良性の肛門周囲腺腫と、悪性の肛門周囲腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌などがあり、これらを鑑別するためには、摘出した腫瘤を組織検査する必要があります。
患部に針を刺して細胞を診る針吸引細胞診という方法もありますが、確実な診断を下すことはできません。
基本的には手術で腫瘍を摘出します。
肛門周囲腺腫の発生には男性ホルモンが関与しているため、再発を防ぐためにも、未去勢の場合は去勢手術を同時に行います。
小さいものであれば、去勢手術のみで肛門周囲腺腫がなくなることもあります。
再発率は低く、多くの場合、その後は健康に過ごせます。
ただし、肛門の周りの皮膚はあまり余裕がなく、筋肉も多いため、あまり大きく切り取ることができません。
腫瘍が小さいうちに外科手術で切り取ることが重要です。
発生には男性ホルモンが関与していると考えられているため、去勢手術により予防することができます。
高齢になり基礎疾患などがあると麻酔のリスクが上がるため、若くて元気なうちに去勢手術をすると良いでしょう。
また、腫瘍は小さいうちでないと完全に摘出できないこともあるので、去勢をしていないオスの犬の飼い主さんは、なるべく早く見つけられるよう、日頃から観察してあげてください。
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<参考文献>
Adam Brodzki, Wojciech Łopuszyński, Yolanda Millan, Marcin R Tatara, Piotr Brodzki, Katarzyna Kulpa, Natalia Minakow. Androgen and Estrogen Receptor Expression in Different Types of Perianal Gland Tumors in Male Dogs. Animals (Basel). 2021 Mar 19;11(3):875.
S Sabattini, A Renzi, A Rigillo, F Scarpa, O Capitani, D Tinto, A Brenda, G Bettini. Cytological differentiation between benign and malignant perianal gland proliferative lesions in dogs: a preliminary study. J Small Anim Pract. 2019 Oct;60(10):616-622.