犬や猫は人と比べて歯石が溜まるスピードが早く、歯周病になりやすい動物で、これが悪化すると歯の根元(根尖)の周囲に膿瘍ができる「根尖周囲膿瘍(歯根膿瘍)」になります。
歯がぐらぐらして痛みが出るため、上手に食べられなくなるだけでなく、目の下など顔の一部が腫れて、そこから膿や血が出ます。
根尖周囲膿瘍は歯周病が進行した病態で、犬も猫も治療には抜歯が必要です。
日常的なデンタルケアで予防してあげましょう。
目次
1.原因|進行した歯周病や歯が折れて歯根部が感染する 2.症状|目の下など顔の一部分が腫れ、膿や血が出る 3.診断|レントゲン検査で歯根部周囲を確認する 4.治療|麻酔下での抜歯と歯石除去。抗菌剤療法も 5.予防|日頃のデンタルケアが重要
歯石が形成されるスピードが速い犬や猫は、歯周病になりやすい動物です。
歯石は歯周病菌が鎧をまとったようなもので、周囲の歯茎に感染し、炎症を起こします。
これが進行すると歯根部に感染し、根尖周囲膿瘍となります。
歯周病以外の原因としては、固すぎるものを噛んだ時や、事故などで歯が折れ、歯髄が露出したときに歯髄炎から波及して起こることもあります。
根尖周囲膿瘍は、歯の根元の部分に膿が溜まるため、初期には痛みからものを食べられなくなったり、やわらかいものしか食べなかったりと、食べ方が変化します。
また、歯周病の症状として、よだれが出る、口が臭い、歯のぐらつきなども見られます。
根尖周囲膿瘍が起こった歯がどこかにもよりますが、根尖周囲膿瘍の症状としてよく見られるのは目の下の腫れや出血です。
これは上の奥歯の根尖周囲膿瘍が原因で起こるもので、溜まった膿を外に出すために作られた管(瘻管)が皮膚を突き破って血液や膿を排出します。
目の下の傷が治らない、顔が腫れている、といった理由で来院される飼い主さんも少なくありません。
症状と頭部のレントゲン検査から診断します。
レントゲン検査では、歯の根元や骨の状態を確認することで、診断を下します。
原因となっている歯を麻酔下で抜歯し、口全体の歯石除去を行います。
犬も猫も基本的に食べ物をあまり咀嚼しないため、抜歯後に食べられなくなることはなく、むしろ痛みがなくなるため、よく食べるようになることがほとんどです。
年齢や基礎疾患から麻酔が困難な場合などは、抗菌剤療法で治療することもありますが、基本的には問題のある歯の抜歯を優先します。
原因となる歯周病を予防するには、歯磨きと定期的な歯石の除去が有効です。
犬も猫も歯石が溜まるスピードが非常に早いため、毎日歯磨きを行うことが理想です。
また、溜まってしまった歯石については、年に1回以上を目安に麻酔下で除去してあげると良いでしょう。
歯が折れることも根尖周囲膿瘍の原因になりますので、動物の骨や蹄など固すぎるものを与えない、ケージの噛み癖に気をつけるなど、注意してあげてください。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
AVDC.Stages Of Pet Periodontal Disease. https://afd.avdc.org/five-stages-of-pet-periodontal-disease/
Wallis CL, Holcombe J. A review of the frequency and impact of periodontal disease in dogs. J Small Anim Pract. 2020 Sep;61(9):529-540.