心因性皮膚炎は心因性脱毛とも呼ばれる、ストレスが原因の皮膚トラブルです。
何らかの理由で強いストレスを受けた猫が、体を激しく舐めることで、体の一部に脱毛が起きたり、毛が短くなったり、そこの皮膚に炎症が起きたりします。
心因性皮膚炎は比較的多く見られるため、猫の飼い主さんは覚えておきましょう。
強いストレスを受けた猫が過剰にグルーミングすることで、舐められた部分の毛がちぎれたり、抜けたりします。
また、猫のザラザラした舌で繰り返し舐められた皮膚が傷つき、感染や炎症を起こします。
ストレスの原因は、引っ越しや部屋の模様替えといった環境の変化、新しい猫を迎えた、飼い主に赤ちゃんが生まれた、同居家族が増えた・減ったなど家族構成の変化、騒音など、さまざまです。
同じ環境にいてもストレスを感じない猫もいれば、強いストレスを感じる猫もいますが、シャムやアビシニアンは、他の猫種よりも発生が多いと言われています。
はじめは脱毛のみですが、慢性化すると皮膚炎に発展し、赤いブツブツやニキビのような膿疱が見られます。
皮膚炎で痒みが生じると、猫がさらに患部を舐めて、症状が悪化します。
症状は猫が舐めやすいお腹や股、後ろ足などに見られることが多く、部分的に毛が抜けたり、毛が途中でちぎれて短くなったります。
皮膚に症状が出る病気は他にもたくさんあるため、感染性(外部寄生虫、真菌、細菌)、あるいはアレルギー性皮膚炎といった他の皮膚病の可能性を排除しながら診断を進めます。
また、ストレスの原因になるものがないかを丁寧に聞き取ります。
炎症を起こしていたり、感染があったりする場合は、状態や原因に応じた内科的な治療を行います。
物理的に舐めることを防ぐため、エリザベスカラーの装着をお願いするケースもあります。
ただし、根本の原因はストレスなので、ストレスの原因を取り除くことが治療につながります。
環境や家族の変化など、慣れてもらうしかないものもあり、気がついたら治っていることもありますが、かまってあげる時間を増やす、元の環境に近づけるなどをして、猫が安心できるようにしてあげましょう。
また、ストレスの軽減を期待して、サプリメントや猫用フェロモンを利用することもあります。
ストレスをなるべく与えないようにすることが予防につながります。
新しい猫を迎える、家族が増えるなどの変化が生じるイベントの際に心因性皮膚炎になる猫もいるため、かまってあげる時間を増やす、落ち着いて過ごせる部屋を作るなど、なるべくストレスを減らせるようにしてあげましょう。
脱毛や皮膚炎はストレス以外でも起こるため、症状が軽いうちに受診しましょう。
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<参考文献>
L S Sawyer, A A Moon-Fanelli, N H Dodman. Psychogenic alopecia in cats: 11 cases (1993-1996). J Am Vet Med Assoc. 1999 Jan 1;214(1):71-4.
Stephen E Waisglass, Gary M Landsberg, Julie A Yager, Jan A Hall. Underlying medical conditions in cats with presumptive psychogenic alopecia. J Am Vet Med Assoc. 2006 Jun 1;228(11):1705-9.