肺高血圧症とは、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇した状態のことで、心疾患、呼吸器疾患、犬糸状虫(フィラリア)症といった寄生虫病など、さまざまな病気に関連して起こります。
基本的に肺高血圧症の犬や猫は危険な状態に陥ることが多く、興奮状態が続いただけでも失神し、そのまま亡くなってしまうこともあるため、心臓病や呼吸器症状がある高齢の犬や猫では特に注意が必要です。
目次
1.原因|循環器疾患、呼吸器疾患、フィラリアなどさまざま 2.症状|運動していないのに呼吸が辛そう。突然の失神から亡くなることも 3.診断|症状や既往歴、心臓超音波検査の結果から推定 4.治療|安静にしつつ血管拡張薬などで内科治療 5.予防|原因になる病気の早期発見が重要!
肺高血圧症の原因となる病気はさまざまありますが、代表的なのは心疾患です。
動脈管開存症、心室中隔欠損症、ファロー四徴症などの先天性(生まれつき)の心疾患や、犬に多い僧帽弁閉鎖不全症や猫に多い肥大型心筋症などの後天性の心疾患では、肺動脈圧が上昇し、肺高血圧症になります。
また、肺動脈にフィラリア成虫が寄生する犬糸状虫症も、肺高血圧症の原因になります。
ほか、血栓塞栓症や呼吸器疾患、肺動脈を圧迫するような腫瘍、内分泌疾患が原因になることもあります。
先天性の病気でなければ多くは高齢で発生するため、心疾患のある高齢犬や高齢猫は特に注意が必要です。
肺高血圧症では、普段の様子に変化が現れる前から、全身に十分な酸素供給がなされていない状態が続いています。
症状としての出始めは、動きたがらない、疲れやすい、運動や興奮した後に苦しそうに息をする時間が長い、運動していないのに呼吸が荒い、辛そうなどで、舌や歯茎の色が紫色っぽくなるチアノーゼ状態を起こすこともあります。
進行すると、さらに呼吸の状態が悪化し、突然失神してそのまま亡くなってしまうことも少なくありません。
また、心疾患がある場合は、腹水が貯留してお腹が膨らむこともあります。
症状や身体検査、レントゲン検査、心電図検査、心臓超音波検査などから、総合的に判断します。
心疾患を原因とする場合は、心臓超音波検査が非常に有効です。
失神の恐れもあるため、診察や検査では興奮させないよう注意して行います。
原因となる病気の治療に加えて、血管拡張薬などで内科治療を行います。
状態によっては酸素吸入が必要なこともあります。
運動や興奮により失神する危険性があるため、なるべく安静にしてあげてください。
治療により良好に管理されたとしても、高地への旅行や飛行機を使った移動などで状態が悪化することもありますので、特に高地への旅行はしないようにしてください。
肺高血圧症の予防には、早い段階で原因となる病気を発見して治療を開始することが重要です。
心臓の病気は進行するまで気付きにくいため、定期的な健康診断による早期発見に努めましょう。
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<参考文献>
Carol Reinero, Lance C Visser, Heidi B Kellihan, Isabelle Masseau, Elizabeth Rozanski, Cécile Clercx, Kurt Williams, Jonathan Abbott, Michele Borgarelli, Brian A Scansen. ACVIM consensus statement guidelines for the diagnosis, classification, treatment, and monitoring of pulmonary hypertension in dogs. J Vet Intern Med. 2020 Mar;34(2):549-573.
M Borgarelli, J Abbott, L Braz-Ruivo, D Chiavegato, S Crosara, K Lamb, I Ljungvall, M Poggi, R A Santilli, J Haggstrom. Prevalence and prognostic importance of pulmonary hypertension in dogs with myxomatous mitral valve disease. J Vet Intern Med. 2015 Mar-Apr;29(2):569-74.