唾液腺嚢胞(だえきせんのうほう)は、唾液を分泌する腺かそれを運ぶ導管が損傷し、唾液が漏れて周辺組織に溜まる病気です。
犬の唾液腺には、耳下腺、頬骨腺、下顎腺、舌下腺があり、嚢胞ができた唾液腺の部位に唾液が溜まり、ブヨブヨとした腫れやコブができます。
溜まった唾液を吸引して取り除けば一時的に腫れは治まりますが、再発も多いため、根治には手術が必要です。
犬の唾液腺嚢胞の手術では、原因となる唾液腺を切除します。
■目次
1.原因|外傷、口内炎、異物、唾石などあるが、原因不明も多い
2.症状|喉や首にブヨブヨとした腫れやコブができる
3.診断|針で溜まった液体を吸引。レントゲンや超音波での画像診断も
4.治療|根治には手術が必要
5.予防|リードで強く引っ張りすぎない、口の中を傷つけない
首輪やリードによる圧迫や擦れによる外傷、遺伝的なもの、口内炎、感染症、唾石(唾液からできる結石状のもの)などさまざまな原因が考えられていますが、原因不明のものも多く、なぜ起こるのかはよくわかっていません。
嚢胞ができた唾液腺の周辺に唾液が溜まり、ブヨブヨとしたコブのような腫れができます。
犬では下顎にできるものが多く、この場合は喉の辺りがカエルのように腫れるため、ガマ腫とも呼ばれています。
通常は触っても痛がることはなく、気管や食道を圧迫しなければ腫れ以外の症状はありませんが、炎症や感染があると痛みを伴う場合もあります。
舌下腺という舌の下にある唾液腺にできた場合は、嚢胞が喉や気管を圧迫し、呼吸や嚥下(飲み込むこと)に障害が見られることもあります。
症状や触診、腫れに針を刺して吸引した液の検査によって診断します。
唾液腺嚢胞では、透明から褐色の粘り気のある液体が採取されます。
また、何かが刺さったことによる腫れや、他の組織の炎症・腫瘍と鑑別するために、超音波検査やレントゲン検査、CT検査を行います。
溜まった唾液を吸引して一時的に症状を和らげることもできますが、再発することが多く、根治には手術が必要です。
手術で適切に原因が除去されれば、ほとんどの場合、予後は良好です。
原因がよくわかっていないため明確な予防法はありませんが、外傷による唾液腺嚢胞を防ぐ方法として考えられるのは、リードを引っ張りすぎない、固いおやつや噛むようなおもちゃで尖っているものは避ける、などが挙げられます。
引っ張り癖のある犬に対しては、首輪ではなく胴輪でのお散歩をお勧めします。
歯磨き時も、誤って口の中を傷つけないよう注意しましょう。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
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