白内障とは水晶体が濁ってしまう病気のことです。
水晶体というのは黒目(虹彩)の瞳孔の奥にあり、カメラのレンズのようなピント調節機能を担っていて、透明であるからこそ光を通すことができます。
白内障は水晶体の一部が白いものから段々と全体的に白くなっていきます。段階として初発白内障、未熟白内障、成熟白内障、過熟白内障と進んでいきます。
白濁が一部分であれば、透明な部分から物を見ることは可能ですが、白濁が水晶体全体に広がってしまえば、スリガラスを通して見たときのようなぼんやりとした見え方もしくはほぼ盲目の状態になってしまいます。
白内障は人では一般的に、年をとったらなるというイメージがありますが、犬では若いうちからなる仔も少なくはありません。
進行のスピードは発症が若齢であるほど早く、高齢であるほど緩やかな傾向があります。
また、年をとるとともに外見上水晶体が白く濁る「水晶体核硬化」という状態になります。
これは白内障のように病気ではなく、加齢性の生理的な経過で、そのせいで動物自身も見えずらいという事もありません。
白内障の原因として、遺伝性、加齢性、外傷性、幼児期の栄養不足などが挙げられます。また、糖尿病を患っている犬にも多くみられ、この場合は急速に進行します。猫での発症は希です。
白内障の症状として、瞳孔の奥が白い、物にぶつかる、いつも見えていた小さなものに気づきにくいというのがみられます。
進行が最終段階にすすむと、白濁した水晶体から成分が溶け出して水晶体自身は透明に戻ったように外見上みえますが、眼内に炎症を起こし、白目の充血と痛みを伴い、炎症による緑内障の発症の危険性もあります。
もし、白内障によって物が見えなくなってしまったとしたら、人であれば生活ががらりと変わってしまい、不自由さに悲観にくれるでしょう。
しかし、犬は人と比べると生活の中で視覚以外の臭覚、聴覚による依存も高いので、盲目直後は物にぶつかることもありますが、段々と環境になれていくでしょう。
また、触る前には声をかける、何かにぶつかりそうになった時に声をかけてあげる、部屋の物の配置は変えない等の配慮に気をつけましょう。
13歳トイプードル
もともと白内障で目が真っ白だったが、昨日から白目が充血している
1年ほど前に成熟白内障(黒目のほとんどが白くなる)と診断された子ですが、さらに症状が進行しぶどう膜炎という状態になっていました。抗炎症剤を使用しやや改善は認められましたが失明に至っています。
白内障は「目が見えなくなってしまう病気」という印象が強いですが、それで終わりではありません。犬の場合はヒトと異なりぶどう膜炎になってしまうリスクが高いとされており、発症すると強い痛みが生じます。
白内障の治療は内科的には行えないため、大学や眼科専門病院をご紹介し手術を行うことがあります。予防としては抗酸化作用のある点眼液があるので使ってみてもよいでしょう。