進行性網膜萎縮(しんこうせいもうまくいしゅく)とは、目の中の一番奥にある光を感じるフィルムのような働きをする網膜の視細胞が徐々に機能を失っていく病気です。
原因は解明されていませんが、遣伝性であるといわれています。発症する年齢・進行のスピードはさまざまで、数週間で失明に至るものもあれば、何年間もかけて徐々に進行していくものもあります。
進行性網膜萎縮の症状として、初期段階に暗いところ・夜間に見えにくそう、瞳孔が開いたまま物にぶつかる、というのがみられます。病態が最終段階の失明まで至ると白内障を発症します。
好発犬種は、M・ダックスフンドと言われており、一般的に6歳までの発症が多いとされています。
進行性網膜萎縮は眼底検査(網膜に外見上の異常がないかを調べる)、網膜電図(網膜が働いているかを調べる)を行い診断されます。
また、目が見えなくなる症状は稀に脳に異常がある場合にも認められるため、除外診断としてMRI、CT検査を行うこともあります。
現在のところ、進行性網膜萎縮の治療方法はありません。
もし、物が見えなくなってしまったとしたら、人であれば生活がからりと変わってしまい、不自由さに悲観にくれるでしょう。
しかし、犬は人と比べると生活の中で視覚以外の臭覚、聴覚による依存も高いので、盲目直後は物にぶつかることもありますが、段々と環境になれていくでしょう。
また、触る前には声をかける、何かにぶつかりそうになった時に声をかけてあげる、部屋の物の配置は変えない等の配慮に気をつけましょう。
進行性網膜萎縮の症例
ミニチュアシュナウザー 5歳
最近夜に散歩に行きたがらない。
夜に目が見えずらいのは夜盲と呼ばれます。
身体検査上は眼底の血管が狭細化していましたがそのほかの異常は検知されなかったため、さらなる精査のために眼科専門病院に紹介させていただきました。
その結果遺伝子検査において進行性網膜萎縮であることが分かりました。
有効な治療法はありませんが、抗酸化効果のあるサプリメントを使用し、万が一ぶつかっても大丈夫なように室内の環境改善をしていただくことになりました。
その後2年経過して昼間の視力も低下してきていますが、飼い主様のサポートもあり健康に暮らしています。