偽妊娠(ぎにんしん)は、妊娠したのと同様の体や行動の変化が起こる状態です。
体や行動の変化は個体差がありますが、主には乳腺が腫れたり、お乳が出始めたりなどがみられます。また、押し入れや人の目が届かないところに巣づくりをする行動が見られることもあります。
犬の発情は次の3段階を繰り返しています。
原因は「プロラクチン」と呼ばれる性ホルモンの分泌によるものです。
妊娠していないにもかかわらず妊娠の兆候が見られるのは、犬の妊娠時に分泌される性ホルモンのメカニズムに原因があります。
発情期には黄体ホルモンやプロラクチン、エストロゲン、プロゲステロンなどの分泌が顕著になり、血漿プロゲステロン濃度が高まります。これらのホルモンが活性化することで、受精卵が着床する条件を整えていきます。
妊娠するとプロゲステロンという妊娠維持に必要な女性ホルモンが分泌されます。メス犬の場合、妊娠していなくてもこのプロゲステロンが活発に分泌されることがあります。
そして、プロゲステロンの分泌が低下したころに、プロラクチンという乳線を刺激するホルモンの分泌が活発になり、その影響で体や行動に変化が起こります。
そのため偽妊娠の多くは発情後4~6週にみられます。
発情期が過ぎれば自然と行動は元に戻りますが、繰り返しの偽妊娠は犬の体に大きな負担をかけますし、子宮や卵巣・乳腺の病気(乳腺炎)を発症する確立が高くなる傾向があります。
どうしても子犬が欲しいのでなければ、病気予防も兼ねて避妊手術をお勧めします。