肺とは胸にある呼吸器の中枢器官で、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う伸縮性の高い袋状組織のことを言います。
空気は、鼻や口から咽頭(のどの部分)、気管を通り、分岐点で左右に分かれる気管支に入ることで左右の肺の中に入ります。
気管支は先に行くにつれて次々に枝分かれして細い管となり(細気管支)、最後は小さな無数の肺胞の1個ずつに繋がっていきます。
この咽頭から肺胞までの空気の通り道を気道と言いますが、ここは絶えず外気が流入し、細かなホコリ、細菌、ウィルスが入り込んだ場合は気管や気管支の表面を覆っている粘膜組織のもつ綿毛によって咽頭方向に押し戻されます。
しかし、体力・免疫力の低下によって、気管や気管支に侵入した細菌・ウィルスなどをうまく排除・退治することができないと粘膜に炎症を引き起こします。
結果、咳や痰が出て、さらに炎症がひどくなり、だんだん気管支の奥、細気管支へと症状が進み、ついには肺胞部まで広がってしまいます。この病態を肺炎と言い、免疫力の弱いワクチン未接種の仔犬・仔猫、高齢の犬猫に多く発生します。
肺炎の原因は咽頭・気管・気管支の細菌性、ウィルス性、アレルギー性の炎症の波及、血流によって離れた臓器からの炎症・感染の波及、肺と接触している臓器の感染・炎症の波及などが挙げられます。
もしくは食べたもの・吐いたものが間違って気管に入ってしまい、うまく排除できなかった場合にも肺炎になります。これを誤嚥性肺炎と言います。
誤嚥性肺炎は餌を勢いよく食べてしまう仔や嚥下障害などの神経異常のある仔にみられます。または肺に腫瘍が発生した場合も肺炎と似た症状が見られることがあります。
肺炎の症状には咳をする、肩で息をする、鼻水が出る、発熱、食欲がない等が見られます。咳は体力を消耗させるため、虚弱な仔犬・仔猫の場合は命を落とす危険性がるので注意が必要です。
肺炎の治療は細菌感染であれば抗生物質、ウィルス感染であれば抗ウィルス剤、アレルギー性であれば抗炎症剤に加え、気管支拡張剤などの投与を行います。
咳がひどいようであれば吸入器を使用して直接口からの薬剤の吸入も行います。
そして体力回復のためにしっかりとした栄養補給も大切です。しかし、動物自身が自分で餌を食べることができないほど症状が悪化している場合は入院治療で点滴を行う必要もあります。