ネコの感染症はたくさんありますが、その大半はワクチン予防が可能です。
予防法が確立されていない不治の感染症といえば「FIV(猫免疫不全ウイルス感染症=猫エイズ)」と「FIP猫伝染性腹膜炎)」の2つです。猫コロナウィルスには2つのタイプがあります。
症状が軽い「猫腸コロナウイルス」と重症になる「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)」の2種類です。「猫腸コロナウイルス」の症状は子ネコの場合は軽度の発熱や嘔吐なので、死亡することなく回復します。
成猫なら無症状のままで一生を終えることも少なくありません。
「猫伝染性腹膜炎ウィルス」の場合は発病率は1%~10%程度と決して高くはないものの発病すると完治することはありません。
FIP発病後の症状は、腹水や胸水のたまる「ウエットタイプ」、水のたまらない「ドライタイプ」があり、両方とも元気がなくなり食欲も落ち、発熱や下痢を繰り返し、徐々にやせてきて、目が濁ったり、肝臓や腎臓が悪くなることもあります。
進行すると貧血や痙攣などの神経症状が現れることもあり、最終的には95%以上が死に至ります。
現在のFIP抗体価検査と呼ばれるものでは、猫腸コロナウイルスに反応するものなのか、FIPウイルスに反応するものなのかを識別することができません。
FIP抗体価検査を受けて、陽性であると診断されても、それが必ずしもFIPの発病と断定することはできないということです〟
FIPには決定的なワクチンも治療法も無いため、キャリア・ネコとの接触を避ける以外に予防法はありません。
5カ月 アメリカンショートヘアー
最近食欲がなく活動性に乏しいとのことで来院。
来院時にはぐったりして呼吸が浅く、酸素を嗅がせて呼吸を安定化させました。落ち着いたところで血液検査、レントゲン検査、エコー検査を行った結果、軽度の黄疸、心臓周囲の液体貯留(心タンポナーデ)が確認されました。
心タンポナーデになると血液を十分に体に送れない心不全の状態になります。
そのため心膜穿刺を行い貯留液を抜去したところ黄色透明な液体が回収されました。タンパク質が多く、細胞診検査上も猫伝染性腹膜炎と一致する所見です。
液体を抜いた後は本人の状態も安定しましたが、翌日心嚢水が再び貯留したため残念ながら亡くなってしまいます。