犬や猫の胸椎は13個、腰椎は7個の椎骨で形成され、その中を走る脊髄は第5(大型犬)から第6腰椎(小型犬や猫)まで存在します。
従って、胸腰部でヘルニアが生じると必ず脊髄を損傷することになり、その結果、後肢に不全麻痺や麻痺が高い確率で起こります。
ダックスフンドやウエルッシュコーギー、ビーグル、ペキニーズなどの軟骨異栄養性犬種では、弱くなった椎間板に負荷が加わることで破れた繊維輪から髄核が突出し、脊髄が圧迫を受けます。
若いうちから発症し、症状は急激に進行するため、早めの対応が重要です。
それ以外の犬種でも椎間板が加齢に伴い変性を起こすと、過形成を起こした繊維輪が脊髄を圧迫することがあります。
一般に症状は慢性的に進行します。
椎間板ヘルニアは重症度によって5つのグレードに分けられます。
グレードⅠ:【脊椎痛】麻痺症状はないが、脊椎に痛みを感じ、動物は動くのを嫌がったり、抱きかかえた時に痛がって鳴くなどの症状がある。
グレードⅡ:【運動失調・麻痺】歩行は可能だが、後肢の力が弱くなり、歩行時にふらつきがみられる。
グレードⅢ:【麻痺】後肢を自力で動かすことができなくなり、引きずって前肢だけで歩く。
グレードⅣ:【排尿麻痺】自分の意思で排尿ができず、垂れ流しの状態。
グレードⅤ:【深部痛覚の消失】最後まで残る深部痛覚までなくなった状態。
さらに、椎間板ヘルニアの犬の約10%には進行性脊髄軟化症を併発します。
これは脊髄神経が軟化(融解)する病気で、発症すると症状は急激に悪化し、呼吸不全を引き起こし、死に至ることもあります。
グレードⅠなど脊椎の圧迫が軽度な場合には安静管理とステロイドやNSAIDS(非ステロイド系消炎鎮痛剤)を使った内科治療を行うこともあります。
ただしグレードが低くてもMRIで脊椎の高度な圧迫が認められた場合や、高グレードの症例では、脊髄を圧迫している椎間板物質を除去する外科手術が必要になります。