食べたものは食道を通って噴門から胃に入り消化され、幽門から腸に流れます。
しかし幽門が狭い幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)の犬では、消化物がうまく腸に流れず、胃に留まって慢性的な嘔吐を起こします。
犬で嘔吐の原因となる病気は多々あるため、嘔吐=幽門狭窄症とは限りませんが、先天性は短頭種に、後天性は小型犬に多い病気ですので、これらの犬を飼われている方は特に覚えておきましょう。
幽門狭窄症の原因には先天性(生まれつき)と後天性があり、何らかの理由で幽門付近の粘膜や筋肉が肥厚(分厚くなること)して幽門部が狭くなります。
なぜ、粘膜や筋肉が肥厚するのかははっきりわかっていませんが、後天性の場合は胃の消化ホルモンの過剰な分泌などが原因として考えられています。
先天性はボクサー・テリアやボストン・テリア、ブルドックなどの若い短頭種に多く、後天性はシー・ズー、ペキニーズ、ラサ・アプソなど中齢以降の小型犬に多いと言われています。
胃の流出障害が起こるため、慢性的な嘔吐とそれに伴う体重の減少が見られます。
嘔吐の頻度や食事からの時間などは、症例により様々です。
嘔吐の原因となる病気はたくさんあるので、他の病気を十分考慮したうえで、総合的に診断しなければなりません。
このため、診断のために血液検査やレントゲン検査、超音波検査など、幅広い検査が必要です。
レントゲン検査では、通常であれば胃の内容物は食後12時間経過していれば腸にすべて流れているはずですが、幽門狭窄症があると胃の内容物や広がった胃が確認できます。
また、造影検査では胃の流出障害を確認できます。
超音波検査では、胃の内容物のほか、粘膜の肥厚の程度が確認できる場合もあります。
内視鏡検査(胃カメラ)では、胃の内部が直接確認できます。また、内視鏡検査時に採取した幽門付近の粘膜を組織検査にかけ、診断に役立てます。
胃の動きをよくする内服薬で症状が改善することもありますが、根本的な解決には外科手術が必要です。
原因がはっきりわかっていないため、これといった予防法はありません、
嘔吐自体が苦しいうえ、長く続くと逆流性食道炎や体重の減少につながりますので、嘔吐が見られたら、早めに受診するようにしましょう。
特にリスクの高い犬種は要注意です。
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<参考文献>
Valérie Freiche, Alexander J German. Digestive Diseases in Brachycephalic Dogs. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2021 Jan;51(1):61-78.