ウォブラー症候群は主に大型犬の成長期に見られる神経疾患で、首の骨(頚椎)の後半(頭から遠い部分)から胸の骨(胸椎)の前半(頭から近い部分)にかけて不安定になって、神経を圧迫する病気です。
ウォブラーとは「よろめき」という意味で、後ろ足のふらつきや開脚、麻痺などが見られます。
今のところ犬のウォブラー症候群については特定の遺伝子変異部位は見つかっていませんが、遺伝性の先天的な病気ではないかと考えられています。
ウォブラー症候群はドーベルマンやグレートデンなど、大型犬の成長期に発症することが多い病気です。
ただし、ドーベルマンでは中〜高齢でも見られることがあります。
原因ははっきりわかっていませんが、遺伝的、急激な成長、不適切な栄養など、さまざまな可能性が考えられています。
症状は成長期から見られることが多く、多くは後肢のふらつきにはじまります。
その後、成長につれて徐々に進行し、後ろ足が踏ん張れず立っているときに開脚姿勢をとる、前肢に麻痺が広がり前足と後ろ足の足並みが揃わなくなるなどの症状が見られます。
また、神経の圧迫から、前足をひっぱると嫌がる犬もいます。
首の痛みがある場合は、頭を下げたままで上げようとしなくなります。
まずは歩行や姿勢などを確認し、神経学的検査とレントゲン検査を実施して診断を進めます。
レントゲン検査では首を曲げた状態で撮影し、首の根元あたりを確認します。
治療方針などを決める際には、CTやMRI検査で神経の状態など、より詳しく確認することもあります。
軽症であれば保存療法として安静な状態を維持させ、ステロイドの投薬により経過を見ます。
保存療法で改善しない場合や、進行して重症になった場合は外科手術で脊椎を固定することもあります。
原因がはっきりわかっていないため、残念ながら予防法はありません。
大型犬では、股関節形成不全など他の病気によって後肢がふらついている可能性もあります。
どの病気であっても言えることですが、異常が見られた場合は原因を早めに突き止め、早期に適切な対応をすることが重要です。
ふらつきなど気になる様子があれば、お早めにご来院ください。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
Marília de Albuquerque Bonelli, Luciana Bignardi de Soares Brisola Casimiro da Costa, Ronaldo Casimiro da Costa. Magnetic resonance imaging and neurological findings in dogs with disc-associated cervical spondylomyelopathy: a case series. BMC Vet Res. 2021 Apr 7;17(1):145.
Ronaldo C da Costa. Cervical spondylomyelopathy (wobbler syndrome) in dogs. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2010 Sep;40(5):881-913.