肥大型心筋症は猫で最もよく見られる心臓病で、ほとんどは重篤になるまで無症状のまま進行します。
一見健康な猫の約15%が本病に罹っているとの報告もあり、元気に見えても決して安心できません。
進行すると肺水腫や血栓塞栓症など重度の合併症を引き起こし、突然亡くなってしまうこともあります。
早期発見が予後を決める重要な要素で、猫に心臓病の定期検査をお勧めする1つの理由になっています。
心筋症とは心臓の筋肉(心筋)に異常が出る病気です。
猫で最も多く見られるのは肥大型心筋症ですが、それ以外にも拡張型と拘束型があります。
肥大型心筋症では心筋が異常に分厚くなり、心臓のポンプ機能が弱まります。
十分な血液を全身に送ることができず、心臓の前で血液が渋滞するため、肺や胸腔内に血液中の水分が漏れて出てきてしまいます。
血液の逆流も生じるため、血栓(血液の塊)ができやすくなります。
これらが複合して、全身の組織や臓器に異常が出ます。
メインクーンなどの大型長毛種や、アメリカンショートヘアなどでの発生が多いと言われていますが、どの猫種でも起こりうる病気です。
加齢とともに発症は多くなるとされていますが、若齢でも発生する病気で、子猫での発生も珍しくありません。
ほとんどは無症状のまま進行します。
徐々に元気がなくなり、運動をあまりしなくなる、食べなくなるなどの症状が出ます。
重篤化すると肺水腫から呼吸障害を起こし、突然苦しそうに呼吸をするようになります。
また、血栓が血管に詰まる血栓塞栓症を発症します。
猫では後ろ足の血管に血栓が詰まることが多く、突然後ろ足が動かなくなる、痛がるなどの症状が出ます。
一般的な問診、身体検査のあと心疾患が疑われそうな場合、あるいは血液検査で心臓マーカーの値が高い場合に画像診断を行います。
画像診断の中でも特に超音波検査では心臓の形態変化から血流の異常まで発見することができます。
本病に対する根本的な治療法はなく、進行を遅らせることが治療の目的になります。
無症状の時期に治療をはじめることに抵抗のある飼い主様もいますが、ほとんどは症状が出るころにはかなり重篤化しているため、無症状の時期からの管理が重要になります。
重篤化して肺水腫や血栓塞栓症を起こしている場合はそれに対する治療を行いますが、再発が多く、そのまま亡くなってしまうことも少なくありません。
本病に対しての有効な予防法はなく、発見の時期が予後を決める重要なファクターになります。
3歳までは年1回、3歳を超えたら年2回は定期健診をして、早めに発見できるように心がけましょう。
猫を動物病院に連れてくるのはかわいそうと思われる方もいるかもしれませんが、愛する家族との突然の別れを避けるためにも、猫自身のQOLを向上するためにも、定期的な受診をお勧めします。
当院では2022年11月1日から2023年2月28日まで「猫ちゃんの健康診断・定期検査キャンペーン」を開催中です。猫の心臓病も検査で早期発見ができる可能性がありますので、この機会に健康診断・定期検査を受診してはいかがでしょうか。
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