膵臓がんは転移率・死亡率がともに高い、命に関わる怖い病気です。
猫での発生は多くありませんが、膵臓がんは猫で珍しくない膵炎や糖尿病、肝外胆管閉塞(総胆管閉塞)など、多くの病気の発生に関係しています。
がんは異常な細胞が無秩序に増え続ける病気で、体のどの部位でも起こります。
膵臓がんは、消化酵素である膵液を作る腺細胞と、膵液を消化管に運ぶ管である膵管に関わる膵外分泌系のがんと、ホルモンを分泌する細胞が異常増殖する膵内分泌系のがんに分けられます。
膵内分泌系のがんはインスリノーマと呼ばれ、血糖値の調節に深く関わるインスリンというホルモンを分泌するランゲルハンス島のβ細胞が腫瘍化します。
残念ながら膵臓がんが発生するそもそもの原因は、今のところよくわかっていませんが、膵臓がんは膵炎や糖尿病を引き起こすことがあり、また肥大したがん組織が膵管や胆管を圧迫すると肝外胆管閉塞の原因になります。
膵臓がんでは、腹部の触診で膵臓付近に腫瘤が確認されることがあります。
外分泌不全を起こした場合は、脂肪便や下痢便が見られます。
また、膵炎を併発している場合は嘔吐や食欲不振が、肝外胆管閉塞を併発している場合は黄疸が見られるなど、併発疾患により症状はさまざまです。
インスリノーマでは深刻な低血糖状態に陥るため、ふらつきや発作、虚脱などの神経症状が見られます。
これ以外にも、抑うつ、元気の消失、食欲の低下、腹部の不快感などが見られることもあります。
レントゲン検査や超音波検査、CT、造影検査などで腫瘍の位置を特定します。
診断には、手術によって取り出した腫瘍を病理検査(腫瘍の組織を見る検査)で確認する必要があります。
血液検査では、膵外分泌系の膵臓がんの場合はアミラーゼやリパーゼといった酵素活性の上昇が見られます。
インスリノーマの場合は、血液検査で血糖値の低下が確認できます。
インスリノーマを診断するために、低血糖時のインスリン濃度を測定する場合もあります。
外分泌系のがんに対しては、これといった治療法はありません。
猫では高度の局所浸潤(がんが隣の臓器や組織まで広がっていくこと)と早期転移のため、見つかったときには手遅れである場合が多く、その場合の生存期間はわずか数日から数週間であるとも言われています。
インスリノーマに対しては、外科的に腫瘍を摘出する方法が効果的な治療法とされています。
対症療法として低血糖に対して輸液で糖を補正する方法や、発作などを抑えるために鎮痛剤や麻酔剤を投与することもあります。
膵臓がんはわかっていないことが多く、これといった予防法はありません。
外分泌系であってもインスリノーマであっても、気づいた時には深刻な状態であることも少なくないので、定期検査で早期発見に努めましょう。
当院では2022年11月1日から2023年2月28日まで「猫ちゃんの健康診断・定期検査キャンペーン」を開催中です。猫の膵臓がんも検査で早期発見ができる可能性がありますので、この機会に健康診断・定期検査を受診してはいかがでしょうか。
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<参考文献>
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Carol H Gifford, Anita P Morris, Kurt J Kenney, J Scot Estep. Diagnosis of insulinoma in a Maine Coon cat. JFMS Open Rep. 2020 Jan-Jun; 6(1): 2055116919894782.
Andrea M. Dedeaux,corresponding author Ingeborg M. Langohr, and Bonnie B. Boudreaux. Long-term clinical control of feline pancreatic carcinoma with toceranib phosphate. Can Vet J. 2018 Jul; 59(7): 751–754.