短頭種気道閉塞症候群は、名前の通りパグやフレンチブルドック、チワワ、シーズーなどの短頭種犬によく見られる呼吸器の複合疾患です。
症状としては、いびきのような呼吸音や、口を開けての荒い呼吸、睡眠時の無呼吸が見られ、悪化すると低酸素からチアノーゼや失神などにつながります。
また、短頭種気道閉塞症候群の犬は特に熱中症のリスクが高いため、夏場や運動時には注意が必要です。
この病気は、外鼻孔狭窄症、軟口蓋過長症、喉頭虚脱、気管形成不全といった、いくつかの上気道疾患が合わさって起こります。
そもそもの原因は短頭種特有の体の構造です。
パグやフレンチブルドック、チワワ、シーズー、ボストンテリアなど短頭種の飼い主さんは、肥満や高温多湿、興奮など、症状が急激に悪化する原因となるリスク因子には十分注意しましょう。
また、この病気の犬では熱中症のリスクが高いため、暑い時期や激しい運動には注意が必要です。
さらに、麻酔のリスクも高いため、全身麻酔時には慎重に管理する必要があります。
よく見られるのは、ブヒブヒ、ガーガーといったいびきのような呼吸音です。
また、苦しそうに口を開けて荒い呼吸をします。
寝ている時に呼吸が止まる睡眠時無呼吸が見られることもあります。
悪化すると呼吸困難から酸欠状態になり、舌が青くなるチアノーゼや失神が起こったり、唾液に泡が出たり、食べ物を飲み込むことが難しくなります。
症状や犬種、レントゲン検査による画像診断、血液検査などから、総合的に診断します。
それぞれの病気に対し、外科的に矯正することが根本的な解決法です。
例えば、軟口蓋過長症の場合は、過長している軟口蓋を切除する外科手術を行います。
ただし、この短頭種気道閉塞症候群の犬は麻酔のリスクも高いため、慎重な管理が必要です。
症状が軽ければ、激しい運動を控える、室温の管理により熱中症のリスクを下げる、太らせないようにするなど、生活上の注意をしながら経過を見る場合もあります。
病態は時間が経過するごとに複雑になるため、治療の開始時期は早い方が良いとされています。
短頭種気道閉塞症候群は犬種特有の病気のため、予防法はありません。
本病の犬は熱中症のリスクが非常に高いので、人間が涼しいと感じる気候であっても、犬の状態には十分注意しましょう。
また、若い時に問題がなくても高齢になって病態が悪化することもあるため、獣医師とよく相談しながら治療について考えましょう。
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<参考文献>
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