ライソゾーム病とは、細胞内にあるライソゾーム(リソソーム)という小器官にある分解酵素のどれかが作られないために起こる遺伝病の総称です。
ライソゾームは、糖質や脂質といった体内の老廃物を分解する役割を持つため、ここの酵素が欠けることで様々な障害が起こります。
犬や猫ではGM1およびGM2ガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、ムコ多糖症などが報告されており、これらは子犬や子猫の時期から発症します。
ライソゾーム病は先天性(生まれつき)の疾患で、その原因はライソゾーム内の酵素を合成する遺伝子の異常です。
本病は劣性遺伝で、両親がこの遺伝子を持っていれば子に受け継がれますが、父親または母親のどちらか一方であれば発症しません。
どの犬種や猫種でも発生はありますが、特にGM1ガングリオシドーシスは柴犬に、セロイドリポフスチン症はボーダーコリーやチワワに多いとされています。
ライソゾーム病では、脳をはじめ全身の臓器に老廃物が蓄積するため、様々な神経症状が現れます。
うまく歩けない、転ぶなどの運動障害や、性格の変化、頭を振る、音に過敏になる、震える、眼振などの異常が見られます。
ムコ多糖症やオリゴ糖蓄積症では、顔つきの変化が見られることもあります。
進行すると麻痺や視覚障害、意識障害など重篤な症状が現れ、やがて命を落とす可能性があります。
発症も早く、GM1ガングリオシドーシスは生後5〜6ヶ月くらいから、GM2ガングリオシドーシスは生後2ヶ月くらいから、セロイドリポフスチン症は1〜2歳くらいからと、ほとんどが子犬・子猫の時期から発症します。
遺伝子検査で異常が見られる場合もありますが、発症した犬や猫でも遺伝子変異が特定されない場合もあります。
確定診断には病理組織検査が必要ですが、これは生前には行えません。
本病は、検査の結果や治療への反応、発症年齢や犬種などから、総合的に診断します。
現在、ライソゾーム病に対する治療法はなく、若齢のうちになくなってしまうことがほとんどです。
対症療法で症状を和らげ、生活の補助などを行い、生活の質(QOL)の向上を目指します。
本病は遺伝病のため、発症する犬や猫が生まれないためにも、両親や兄弟など、血縁のある犬や猫での発症には十分注意して繁殖計画を立てることが重要です。
また、万が一発症してしまった場合は、お早めに連れていらしてください。
光が丘動物病院グループ
東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
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Osamu Yamato, Asogi Kobayashi, Hiroyuki Satoh, Daiji Endoh, Toru Shoda, Yukiko Masuoka, Ayano Hatakeyama, Eun-Og Jo, Tomoya Asano, Madoka Yonemura, Masahiro Yamasaki, Yoshimitsu Maede. Comparison of polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism assay and enzyme assay for diagnosis of G(M1)-gangliosidosis in Shiba dogs. J Vet Diagn Invest. 2004 Jul;16(4):299-304.