脳炎とは脳に炎症を起こす病気の総称で、犬では比較的若い小型犬に発症する非感染性のものが、猫では感染性のものが多いと言われています。
基本的には脳炎は治療をしないと進行して悪化するため、早期に発見して早期に治療をはじめる必要があるでしょう。
脳炎の原因は大きく感染性と非感染性に分けられ、犬ではほとんどが非感染性と言われています。
犬の非感染性脳炎には、パグやマルチーズ、シー・ズーなど小型犬に多い壊死性髄膜脳炎(パグ脳炎)、ビーグル、バーニーズ・マウンテンドッグなどに多いステロイド反応性髄膜炎・動脈炎、マルチーズやウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど毛の白い犬種に多い特発性振戦症候群、ゴールデン・レトリーバーなど大型犬に多い好酸球性髄膜脳炎、全ての犬に発症しうる肉芽腫性髄膜脳炎などがあります。
ほか、ジステンパーウイルスや狂犬病ウイルスが、感染性脳炎の原因になります。
猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルス感染による脳炎が最も多いとされています。
ほかにも、猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスへの感染で免疫が弱まると感染症に罹りやすくなるため、間接的に感染性脳炎の原因になりえます。
また、犬でも猫でも、耳や鼻、目など、頭部の感染症が脳に波及して脳炎の原因になる場合もあります。
炎症のある部分によって異なりますが、麻痺やけいれんといった神経症状から、視覚障害、運動障害、平衡感覚障害など、様々な症状が見られます。
進行すると意識障害を起こすほどまで悪化するため、気になる症状が見られた場合は早めに受診しましょう。
症状や動物の状態、神経学的検査や血液検査などから脳炎が疑われた場合は、MRI検査や脳脊髄液検査といった精密検査を行います。
脳の炎症を抑えるために、ステロイドや免疫抑制剤による薬剤療法を行います。
けいれんが見られる場合は、発作を抑えるために抗てんかん薬を使用する場合もあります。
原因が感染性で、細菌感染を起こしている場合は、抗菌薬により治療を行います。
ジステンパーやFIPでは、治療の甲斐なく亡くなってしまうことが少なくありません。
非感染性の脳炎は、発生の原因がよくわかっていないため予防は難しいでしょう。
一方で、致死率と感染力の非常に高いジステンパーは、ワクチンによる予防が可能です。
また、FIPは猫の室内飼いを徹底することが予防につながると考えられています。
犬と猫の予防診療の重要性についてはこちらの記事でも解説しています
猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスについてはこちらの記事でも解説しています
脳炎は一般的に進行性であるため、治療をしない限り悪化します。
早期に発見して早期に治療をはじめることが重要ですので、犬や猫に普段と変わった様子などが見られたら、早めに受診するようにしましょう。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
Jessica A Elbert, Wilson Yau, Daniel R Rissi. Neuroinflammatory diseases of the central nervous system of dogs: A retrospective study of 207 cases (2008-2019). Can Vet J. 2022 Feb;63(2):178-186.
J S Rand, J Parent, D Percy, R Jacobs. Clinical, cerebrospinal fluid, and histological data from twenty-seven cats with primary inflammatory disease of the central nervous system. Can Vet J. 1994 Feb;35(2):103-10.