脳は頭蓋骨の中に収まっていて、脳の周りや脳の内部の空洞は脳脊髄液という液体で満たされています。
水頭症は、この脳脊髄液が溜まりすぎて脳を圧迫し、脳室が大きくなってしまう病気です。
犬ではチワワなどの小型犬や短頭種に多い病気で、若い頃から発症します。
水頭症は早期発見が重要ですので、好発犬種の飼い主さんは特に注意が必要でしょう。
生まれつきの「先天性」と、生まれたときは正常であるがその後なんらかの原因で発症する「後天性」があります。
先天性はチワワ、ミニチュア・ダックスフント、トイ・プードル、マルチーズ、シー・ズー、ヨークシャー・テリア、ポメラニアンなどの小型犬や、パグ、ボストンテリアなどの短頭種に多く見られます。
原因不明ですが、特定の犬種に多く見られることから、遺伝の可能性が考えられています。
後天性は、脳脊髄液の循環障害や脳炎、脳腫瘍などで脳脊髄液が産生されすぎる、または吸収されないことが原因で発症するとされています。
脳炎についてはこちらの記事で解説しています
脳腫瘍についてはこちらの記事で解説しています
先天性の場合は、発育不良の症状とドーム状で大きい頭が見られます。
発育不良は単に体の成長だけでなく、トイレをなかなか覚えないなど、知能の発達にも影響を及ぼします。
認知症のような症状が見られたり、攻撃的になったりすることもあり、さらにてんかんのようなけいれん発作が見られることもあります。
先天性の水頭症の症状は子犬の時期から見られるため、ほかの子犬と違うと感じたら、早めに検査をしたほうが良いでしょう。
後天性の場合は、水頭症の症状よりも原因となる病気の症状が主になります。
まずは神経学的検査で状態を確認します。
また、頭蓋骨が完全に閉じていなければ補助的に超音波検査を活用できます。
先天性の多くは子犬の時期に発症しますが、子犬は頭頂部に泉門と呼ばれる頭蓋骨が閉じていない部分があるため、ここに超音波のプローブを当て、脳脊髄液が溜まっていないかを確認します。
しかし、他の脳障害の有無も確認するためにも、可能であればCT検査やMRI検査も行うとよいでしょう。
内科治療では、ステロイドや利尿薬で脳圧を下げ、けいれんがある場合は抗てんかん薬で治療します。
症状が重度な場合や内科治療への反応が悪い場合は、外科手術を検討することもあります。
残念ながら先天性の水頭症に対する予防法はありません。
小型犬や短頭種に多いとされているので、これらの犬種を飼っている方は、飼い犬の様子に注意してあげましょう。
また、後天性では脳炎や脳腫瘍が原因になることがあります。
どちらにせよ、脳の病気は早期発見が難しい面もありますので、少しでも変わった様子などが見られたら、早めに受診してください。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
Chelsie M Estey. Congenital Hydrocephalus. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2016 Mar;46(2):217-29.
Daniela Farke, Malgorzata Kolecka, Adriana Czerwik, Marcin Wrzosek, Sebastian Schaub, Martin Kramer, Klaus Failing, Martin Jürgen Schmidt. Prevalence of seizures in dogs and cats with idiopathic internal hydrocephalus and seizure prevalence after implantation of a ventriculo-peritoneal shunt. J Vet Intern Med. 2020 Sep;34(5):1986-1992.