肝臓で作られた消化酵素は胆嚢(たんのう)で濃縮・貯蔵され、胆管を通って胆汁として消化管に分泌されます。
肝外胆管閉塞はこの胆管が通過障害を起こした状態のことで、猫では黄疸(おうだん)、食欲不振、嘔吐、脂肪便、腹痛、便が白っぽくなるなどの症状が見られます。
さまざまな原因が考えられますが、猫では構造上、膵炎と関連して起こる可能性が犬より高いと考えられています。
肝外胆管閉塞の原因には、胆管が詰まる場合と、外部からの圧迫で胆管が狭窄する(管の中が細く狭くなること)場合があります。
胆管が詰まる原因には、胆石、胆泥、胆汁の粘稠度が非常に高くなるなどが考えられます。
外部からの圧迫は、膵炎や腸炎、胆管や膵臓、十二指腸の腫瘍などにより起こります。
猫の胆管は、膵臓からの消化酵素が通る膵管と出口付近で合流しているため、構造上、膵炎を原因とする胆管閉塞が犬よりも起こりやすいと考えられています。
胆管が閉塞すると胆汁のうっ滞(消化管の運動が止まってしまうこと)が起こり、黄疸を呈します。黄疸を呈すると白目や歯茎、肛門周りの皮膚や耳介の内側などが黄色くなります。
そのほかの症状としては、食欲の低下や嘔吐、下痢、腹痛などが見られます。
また、脂肪の分解を助ける消化酵素である胆汁が消化管内に分泌されなくなるため、消化不良を起こして脂肪便が出たり、便の色が白っぽくなったりします。
さらに脂肪やビタミンKなどの脂溶性ビタミンの吸収不全から、血液凝固不全が起こりやすくなります。
肝外胆管閉塞を罹患すると、血液検査において通常、肝酵素やコレステロール、総胆汁酸濃度、ビリルビン値の上昇が見られます。
尿検査ではビリルビン尿とウロビリノーゲンの欠如が確認できます。
画像診断は本病の診断に有用で、超音波検査やCT検査では胆管の拡張や蛇行、胆石などが観察できます。
膵炎や腫瘍など他の疾患に併発している場合は、その病気を特定するために追加検査を行います。
閉塞の原因や猫の状態に応じて治療を行います。
もし膵炎が原因であれば、まずは内科的に膵炎の治療を行うことが重要です。
胆管が胆石で完全に詰まってしまっている場合、内科治療に反応しない場合、膵炎が治癒しても閉塞が解除されない場合などは、外科手術が必要になります。
そのほか、嘔吐や下痢など症状に応じた対症療法を行い、不足している栄養分を補給しながら治療を進めます。
肝外胆管閉塞を予防する方法は、現在のところわかっていません。
膵炎や腸炎など、他の病気から併発することもあるため、猫の様子に異常が見られたらすぐに受診するようにしましょう。
また、猫に限らず動物は普段の様子からは病気がわかりにくいため、定期的に健康診断をすることで、悪化する前に病気を見つけることも大切です。
当院では2022年11月1日から2023年2月28日まで「猫ちゃんの健康診断・定期検査キャンペーン」を開催中です。猫の肝外胆管閉塞も検査で早期発見ができる可能性がありますので、この機会に健康診断・定期検査を受診してはいかがでしょうか。
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東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
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Maureen A Griffin, William T N Culp, Michelle A Giuffrida, et al. Choledochal stenting for treatment of extrahepatic biliary obstruction in cats. J Vet Intern Med. 2021 Nov;35(6):2722-2729.