てんかんはけいれんなどの発作が認められる脳の病気です。
犬や猫が突然発作を起こして意識を失うと、このまま死んでしまうのではないかと慌ててしまう飼い主さんも多いでしょう。
てんかんは治る病気ではありませんが、発作をうまくコントロールできた犬や猫は、長く普通の生活を送ることができます。
また、実際にてんかんの発作が起こってしまった場合の対応方法も記載しておりますので、もし発作が起こった時のために頭に入れておきましょう。
てんかんには、脳やその周辺に異常が見当たらない特発性てんかんと、異常が見つかっている構造的てんかんがあります。
特発性てんかんには、遺伝性が強く疑われる犬種がいます。
どの犬種でも起こる病気ですが、日本でよく飼育されている犬種で遺伝的要素が疑われているものとしてはゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シェットランド・シープドッグ、ダックスフンドなどがあります。
また、猫では家族性のてんかん(兄弟や親子で発症が見られること)も見つかっています。
構造的てんかんは、脳血管の障害や炎症、外傷、水頭症、腫瘍といった脳神経疾患の経過中に発生します。
てんかん発作では、脳の一部または全体に異常な放電が起こります。
脳の一部分が発作を起こす焦点性発作では、体の一部にけいれん(ひきつけ)が起こります。発作を起こした脳の部位によっては意識を失います。
また、発作中に脳に異常を起こす部位が移動することもあります。
脳全体が一斉に発作を起こす全般発作では、全身がけいれんし、意識を失います。
おしっこやうんちを漏らす場合もあります。
発作は通常であれば2〜3分で自然に治ります。
24時間以内に2回以上発作が起こる群発発作や、発作が連続して起こったり5分以上続いたりする重積発作は、命に関わる危険な状態です。
発作が起こる前兆として、落ち着きがなくなったり、一点を見つめたり、感情が不安定になるなどの異常が見られることもあります。
まずは問診により、飼い主さんの目撃した発作がてんかん発作なのか否かを判断します。
言葉で説明してもらうことになりますが、それでは判断が難しいため、できれば動画を撮影してください。
なお、24時間以上空けて2回以上のてんかん発作が起こることがてんかんの定義の1つですので、1回のみの発作では判断できません。
続いて、身体検査、神経学的検査、血液検査や尿検査、必要に応じてMRIなどの画像診断、脳波検査などから、総合的に診断します。
抗てんかん薬の投与により発作の発生を抑えることができます。
発作の状況や副作用の有無、他の病気の発生がないかなどを確認するために、定期的な受診と検査は必要です。
群発発作や重積発作では、集中治療が必要な場合もあります。
実際にてんかんの発作が起こってしまったら、以下の点を気を付けて対応しましょう。
・慌てずに発作の経過時間を測定する
・大きな物音をたてたり、急に明かりをつけるなど刺激を与えない
・体や頭を触らない
発作が起こっている最中に、刺激を与えるようなことを行うとかえって発作が長引いてしまう可能性があります。
まずは、落ち着いて、発作が起こった状況や時間などを記録をしましょう。また、顔まわりを触ると噛まれて怪我をすることがありますので、気をつけましょう。
てんかんの犬や猫は、発作時以外は普通の犬・猫と変わらず過ごすことができます。
長く付き合う必要のある病気ですが、発作をうまくコントロールできれば、ストレスのない生活を送ることができるでしょう。
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東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
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Yuji Hamamoto, Daisuke Hasegawa, Shunta Mizoguchi, Yoshihiko Yu, Masae Wada, Takayuki Kuwabara, Aki Fujiwara-Igarashi, Michio Fujita. Retrospective epidemiological study of canine epilepsy in Japan using the International Veterinary Epilepsy Task Force classification 2015 (2003-2013): etiological distribution, risk factors, survival time, and lifespan. BMC Vet Res. 2016 Nov 9;12(1):248.