人と同様に、犬や猫にも認知症(認知機能不全症候群)はあります。
高齢だからと問題視されない方もいますが、認知機能不全症候群は徐々に進行して、夜鳴きや寝たきり、行動の変化などから、飼い主さんの生活に大きく関わります。
少しでも長く飼い主さんと犬や猫が快適に生活できるよう、一緒に考えていきましょう。
高齢の犬猫で認められるため、老化による脳の変化が原因と考えられています。
ただし、すべての犬猫が認知機能不全症候群になるわけではなく、症状が出ることなく一生を終えるケースも多くあります。
犬や猫の認知症では、以下のような見当識障害と呼ばれる症状が見られます。
・自分の居場所や周囲の環境を把握できなくなる
・物にぶつかりやすくなる
・狭いところに入りたがる
・人や動物を認識できなくなる
・こぼしたフードを見つけられなくなる
また、症状が進行すると以下のような行動異常が見られます。
・立ち尽くす
・うまく曲がれなくなる
・夜に徘徊する
・夜鳴きをする
また、社会的交流の変化として、人や動物に対する反応が変化することもあります。
反応が鈍くなることもあれば、攻撃的になることもあり、性格が変わったと感じる飼い主さんが多くいます。
また、トイレの失敗が増え、寝たきりになると垂れ流しになることも。
さらに活動が変化して、円を描くように歩き続ける(旋回行動)などの無気力・無関心・無目的な行動が増えます。
症状を点数化して、その合計点からどの程度疑いがあるかを評価する方法があります。
評価方法には様々ありますが、どれも飼い主さんの注意深い観察が手助けになるので、お家での様子をしっかり観察しましょう。
また、身体的な病気や脳の腫瘍が異常行動の原因になっているケースもあるので、他の検査を組み合わせながら、慎重に診断を進めます。
生活環境を整えて、生活しやすいようにしてあげる工夫が必要です。
見当識障害には、生活範囲を狭くして、食事やトイレの場所をわかりやすくするなども良いでしょう。
可能な範囲でお散歩に連れて行ったり、おもちゃで遊ばせたりして、刺激を与えることも重要です。
投薬により症状が改善することもあります。
認知機能不全症候群を予防することはできませんが、早めに発見すれば早めに介入することはできます。認知機能不全症候群の介護は飼い主さんの生活に大きな負担になることも多いため、必要に応じて動物病院に預けたり、シッターを利用しながら、適度な息抜きをお勧めします。お困りの場合は、獣医師にご相談ください。
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<参考文献>
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