ある程度の年を重ねた、高齢の約10歳以上のメス猫のお腹をなでていて、しこりを見つけることがあると思います。 「乳首かな?」と最初は思うかもしれませんが、よく確認すると乳首ではなく、皮膚の下にデキモノがさわれる。 そのデキモノは、乳腺腫瘍の可能性があります。 猫の乳腺腫瘍についてお話していきましょう。
猫の胸、お腹、股の部分にかけて乳腺組織や乳頭が存在します。 その近くにできたデキモノは、乳腺腫瘍の可能性が高いでしょう。 大きさはそれそれですが、比較的コリッとした硬い感触が多く、やわらかいものもあります。 この猫の乳腺腫瘍のこわい所は、9割が悪性腫瘍ということです。 そのままにしておくと、みるみるうちに大きくなってしまい、近くのリンパ節に転移、全身、肺に転移してしまい、命を落とす恐ろしい病気です。
猫の乳腺腫瘍をみつけたら、基本は切除手術です。 腫瘍のそのカタマリだけを取ってしまえば終わり、だと思っている飼い主さんは多いと思いますが、そうではありません。 乳腺腫瘍は周囲の乳腺組織に小さな腫瘍細胞が転移している場合が多く、腫瘍と腫瘍の周囲の皮膚や組織を切除する手術から、場合によっては乳腺を胸からお腹まで切除する「片側乳腺切除」か、乳腺全てと切除する「両側乳腺切除」が必要なこともあります。 そして、もちろんのことですが、手術前には検査が必要です。 麻酔に耐えられるのか等の全身状態の確認のための血液検査、周囲のリンパ節に転移がないかの確認、肺に腫瘍の転移がないかの確認のためのレントゲン検査などを行います。 もし、レントゲンで肺に転移巣があれば、残念ながら手術は適用されません。肺に転移している場合は、乳腺腫瘍だけを摘出しても意味がないからです。 ちなみに、一般的に他の部分の身体にできた腫瘍の第一段階の検査として、針で一部をとる針生検での細胞診断がありますが、乳腺腫瘍ではあまり意味がないため行わないことが多いでしょう。
避妊手術をしていない猫に比べ、避妊済みの猫は乳腺腫瘍が発症する確率は低いのです。 乳腺腫瘍を予防するには、避妊手術を生後6か月~1歳までにすることでしょう。 その時期までに避妊手術を行った猫は、未避妊の猫に比べて乳腺腫瘍の発症リスクが約80~90%減少すると言われています。 もし、妊娠・出産を望まないのであれば、若齢の健康のうちに避妊手術をすることをおすすめします。 また、治療として乳腺腫瘍摘出の手術の際も、一緒に避妊手術を済ませることが多いでしょう。 ちなみに、種類として日本猫などが発症する確率は他の種類の猫に比べ高いと言われています。
乳腺腫瘍が見つかった場合、できるだけ早く動物病院にかかりましょう。 猫の乳腺腫瘍の予後は、腫瘍の大きさが関係する場合があります。 とくに、しこりの大きさが2~3㎝以上に大きくなると予後が悪い可能性があります。 しこりが小さくても、様子をうかがって、どんどん大きくなる状態をほうっておくべきではありません。 腫瘍かどうかもわからなくても、疑わしい点があれば、獣医師に相談してみましょう。