飼い主様にとって、避妊手術はまちがいなく一大イベントだと思います。 術前に検査を行い、健康に問題のないことを確認。 退院後自宅で看てあげられるように仕事の予定を調整。 手術当日、執刀医の先生の無事の連絡を受けて、ほっと一安心。 退院のお迎えをして、やっと家についたと思ったら・・・おしっこが出ない!?出たと思ったら血尿!! 実は避妊手術後に、こういった排尿異常の問い合わせが来ることは珍しくありません。 基本的には自然に収まることが多いので、過度な心配はいりませんが、それでも飼い主様にとっては心配なもの。 今回は、そんな飼い主様に、なぜ避妊手術のあとに排尿の異常が出ることがあるのか、その考えられる可能性をお伝えします。 原因がわかれば、少しは不安も和らぐかもしれませんので。
猫の飼い主様であれば皆さまがご存知の通り、猫はとても繊細な動物です。 病院のような特殊な環境で、かついつもと異なるトイレを使用しているので、多くの猫が限界まで排尿を我慢します。 したがって、膀胱炎様の症状を起こしやすくなります。 膀胱炎の症状は少量の尿が頻回出るのが特徴で、たまに目に見えての出血があります。 もしそういった症状があるのであれば、ストレス由来の膀胱炎だと思います。 ほとんどの場合、自宅に戻った後は速やかに回復しますが、2,3日続くようであれば、執刀した先生に指示を仰いだ方が良いと思います。
避妊手術で子宮と卵巣を摘出する際に、それぞれ卵巣側と子宮側を縫合糸で結紮してから摘出するのですが、稀に結紮した子宮側の縫合糸が、子宮の粘膜面に入りこんだ場合、尿に出血が混じる可能性があります。 決して手術の失策ではなく、稀に起こるケースですので、それほど心配しなくてもいいと思います。 膀胱の問題ではないので、頻回尿がなく、尿に出血だけ混じる場合はこれの可能性があります。 基本的には無処置で治癒しますが、たまに1週間ぐらい続く場合もあります。 こういった場合でも、自然に出血は治まります。
避妊手術をする際に、膀胱の中に尿がたまっていると避妊手術がやりにくくなるため、麻酔をかけた後に排尿させます。 もちろん、猫は意識がないので、自力で排尿はできません。
カテーテルを入れる、腹部を圧迫して排尿させる、針で刺して排尿させるなどが方法としてあげられます。 メス猫のカテーテル導尿は、あまり一般的ではないため、膀胱を圧迫して排尿させる、もしくは針で穿刺して尿を吸引します。 この際、偶然に膀胱の粘膜の血管を損傷した場合に、膀胱の中に血液が混入します。 この際も、頻尿感はあまり出ませんが、出血してから時間がっているケースが多いので、赤というよりは茶褐色の尿が出ます。 ほとんどの場合は、1回だけの排尿異常で落ち着きますので、そのあとの排尿が問題なければ、様子を見ていただいても大丈夫だと思います。
避妊手術後の排尿異常は、ある程度の確率で起こるものですが、深刻な状況になることは滅多にありません。 もし帰宅後に排尿に異常があったとしても、慌てずよく経過を観察して、とにかく猫のストレスをとることだけに専念していただいた方がいいと思います。