「犬の発情」といわれると、ポタポタと垂れる陰部からの出血が思いつきますよね。お部屋が汚れないように、この時期はオムツをはかせたりする方も多いのではないのでしょうか。
自分の犬の発情がいつ頃だったか覚えていない方は要注意。発情の前後は犬の体調が変化しやすい時期です。
今回は、発情が犬に与える影響についてお話いたします。
発情出血は生理ではない
私たち獣医師もわかりやすく「生理」と言ってしまうこともあるのですが、犬の発情出血と人の月経は全く別のものです。
人の月経は、妊娠の可能性がなくなったことを意味しています。厚くなった子宮内膜が不要となり、剥がれて出てきたものです。
一方、犬の発情出血は妊娠にそなえるためのもの。排卵の準備が整い、これから発情期が始まるというサインです。
人でも犬でも排卵にはエストロジェンという性ホルモンの働きが必要です。
また、エストロジェンは排卵を促すだけではなく、子宮内の血管を増殖させる作用もあります。このエストロジェンの作用により、犬では排卵が近づくと、発達した子宮内の血管からじわじわと血液が滲み出してくるのです。
血液が膣を通り陰部から排出されたものが、犬の発情出血です。
発情間隔は不安定なことが多い
犬の発情の間隔は4~12ヵ月(平均7ヵ月)の範囲とされています。
この間隔は犬によって異なりますが、同じ犬でも不安定なことが多いです。また、発情出血についても、小型犬や老齢犬では出血量が少なかったり、自分で舐めてしまい飼い主が気付かないこともあります。
発情出血が始まってすぐの頃は、メス犬はフェロモンでオス犬を引きつけるものの、まだ交尾は許してくれません。
出血から7日くらいで本当の発情期に入り、メス犬はオス犬を受け入れるようになります。メス犬はマーキングが増えたり、食欲がなくなったりと行動の変化も見られるようになります。
出血はだいたい20日程度で終了しますが、このタイミングも犬によって差があります。
発情後に気をつけたい病気
発情による体の変化が原因となる病気もあります。
たとえば、子宮頸はふつうはかたく閉鎖されていますが、発情期がくると頚部がゆるむために細菌が侵入しやすくなります。
この感染が、発情の後に子宮蓄膿症などの子宮の病気へと進行していく場合があります。
また、犬では発情が始まってから2ヶ月程度で、妊娠していないにもかかわらず乳腺が張り、乳汁が分泌されることがあります。
これを偽妊娠といいます。偽妊娠自体は病気ではありませんが、乳汁の産生が乳腺炎を引き起こすこともあります。
まとめ
発情が犬の体に与える影響は決して小さくはありません。
発情によるストレスや、病気のリスクは避妊手術で回避することができます。発情間隔の不安定な犬や、偽妊娠を繰り返すような犬では特に注意が必要でしょう。
避妊をしていない犬では、発情による精神的な変化や肉体的な変化を、飼い主はしっかりと観察してあげるようにしてあげてくださいね。