メス猫の避妊手術を目的に動物病院へ行くと、だいたいの動物病院では、 「術前検査を行いましょう」 と言われます。 手術のために一体何を調べているのでしょうか?今回はメス猫避妊の術前検査として行われる内容についてお話ししたいと思います。
術前検査の内容は、獣医師による身体検査に加えて血液検査や胸腹部のレントゲン検査程度のことがほとんどです。実施する可能性の高い項目からあげてみますと・・、
診察室に入り獣医師が飼い主さんと食欲や元気に問題がないか聞きながら猫を撫でるように軽く触っていたかと思うと、いつの間にか「はい、大丈夫そうですね」と言われて、 「あれ?もう終わったの?」なんて気がつかないうちに終わっていたりします。 実は、手術の可否を判断するために必要な部分ををチェックしていたのです。 これは、人と同じく「視診、聴診、触診」と言った診察手法によって、体の状態を把握していたということです。簡単に言えば、「体を『見て、聞いて、触って』判断する」ということなのです。 これによって、猫が一般的な健康体であるかどうかを見極めます。 例えば、虚弱なほど痩せていたり、毛並みが悪く艶がなかったり、目ヤニが多く歯がボロボロだったり…。もし若い1〜3歳位の猫がこんな状態だったら、猫飼いの方ならすぐにおかしいと感じますよね。 獣医師はここまでおかしい状態でなくても、体に現れるわずかな変化を見逃さないで指摘できるのです。1歳までの若い猫であれば、特に先天性疾患(奇形など)があったりエイズなどのウイルス感染がありそうかどうかの点を重視して見ています。 あとは、触診(触って)でお腹の中がどんな状態かを探ります。尿や便のたまり具合はもちろんのこと、本来触れないような部分が触れるという異常がないかもわかります。 メス猫で肝心なのは「子宮の状態がどうなっているか」です。発情期の子宮は未発情の子宮に比べて2〜3倍に膨らみ、はっきり触れるようになります。正常な発情であれば手術に影響することはないのですが、多少傷口の大きさは変わるかもしれませんね。
血液検査では何を重視しているのでしょうか? 避妊手術を目的としての検査なら、主として6ヶ月からせいぜい5歳未満の猫が対象となることが通常なので、これもまた先天的な異常がないかどうかと、麻酔薬の体内代謝に重要な臓器となる腎臓と肝臓機能が問題ないかを判断しています。また、猫エイズや白血病などのウイルス感染の判定も血液検査で行います。 明らかな異常があれば、残念ながら手術は見合わせとなり、さらなる検査や治療が必要になることでしょう。
避妊手術の術前検査としてのレントゲン撮影は、病院によっては行わないところもあるかもしれません。 もちろん全身的な検査を行うという意味では非常に大切な検査の一つです。 ですが、大概は身体検査と血液検査で手術可否が判断できてしまうので、どうしても必要だと判断したときのみ行う、という動物病院が多いと思います。 レントゲンで評価していることは、 骨格の異常が無いか、胸部腹部の各臓器の形や位置関係がおかしくないかどうか、さらに本来見えてはいけないものが見えるかどうかをチェックしています。
検査の費用は病院によって内容もことなるため一概には言えないのですが、通常は数千円から高くても2〜3万円までといったところでしょう。 手術費用が大きくかかることを考えると検査費用を抑えたくなってしまうかもしれませんが、そこは大切な猫ちゃんの体に関わることなので、獣医師に必要な検査の費用を確認してしっかり受けていただくことをお勧めします。
いかがでしたか? 病院に行って、「検査が必要」と言われてよく分からないままお金を取られたというよりも、内容を理解して納得して検査を受けた方が猫にとっても人にとっても良いことだと思いますので、ぜひ参考にしてください。