メス犬の避妊手術を予定している場合にまず行う術前検査。 これまでにも術前検査の内容についてはお話ししてきたと思いますが、 今回はメス犬の避妊手術の前に必要な検査についてお話ししたいと思います。
この一般身体検査というのは、術前検査に限らず一般的な診療の基本中の基本になります。 まずは診察に入る前に犬の様子を確認します。 元気そうにしているか、何所か動きでおかしいところはないか。その時の様子で特にひっかることがなければ実際の診察に入っていきます。 体重測定、体温測定、視診、聴診、触診。 視診というのは、獣医師から見て外貌上で何かおかしいところはないか見る、というもの。 聴診は、聴診器での心音や呼吸音がメインとなります。場合によっては獣医師の耳そのもので口から出る呼吸の音などを聞くこともあります。 そして触診は、獣医師が犬の体を隅々までしっかりと触り(嫌がらないようにする配慮はしますが)、体の表面だけでなく、特にお腹の中をわかる限りで触るのです。 メス犬の避妊手術で重要なのは子宮の状態なので、触診でまずはわかるかどうかチェックします。ただし、犬の体格によっては残念ながら全くわからないこともあるので、子宮の状態がわからず心配な時にはレントゲン検査や超音波検査を併用することでしっかり確認することができます。
血液検査では、主に「全血球計算」と「血液化学検査」に分かれます。 猫にあるような猫エイズなどのウイルス検査は通常行いません。 追加検査としては、動物病院によって行う場合と行わない場合がありますが、 「血液凝固検査」という検査を行って止血異常がないかを調べることもあります。 手術時に血液が自然と止まらないと致命的になる場合があるからです。 その他は手術と直接関係しそうな点があった場合に追加検査することもありますが、そこは獣医師からのアドバイスや提案があるはずですから、特に心配はいらないと思います。
術前検査としてレントゲン検査で判断する重要なポイントは、胸部と腹部です。 特に胸部は循環器である心臓と肺が存在しているので、麻酔をかけても心肺機能が正常に維持されるかどうかをあらかじめ判断することが重要になります。 若い犬でもごく稀にではありますが、先天性の異常が見つかり肺の一部が膨らんでいなかったりすることもあるので注意が必要です。 想定外の問題が、麻酔をかけて手術を始めてから気がつくようでは間に合いませんから、できるだけ未然に防ぐ努力を獣医師はしているのです。
一般身体測定の部分でも書きましたが、子宮の状態に異常がないかをしっかり判断する際、レントゲンでも分かりにくいことがあるため、そういった時には超音波検査で確認をします。 1歳までの若くて元気な仔なら、超音波検査までしない場合も多々あるのですが、成犬となり発情を何度か繰り返した後の仔の場合は子宮や卵巣疾患などに罹患してしまうケースもあるため、念のために超音波検査を実施することがあります。
いかがでしたか? これらの検査を行っているということを事前に知っておけば、検査内容が足りなかったり過剰だったりを飼い主さん側からチェックすることも可能でしょうから、ぜひ参考になさってください。