去勢手術や避妊手術は麻酔下で行うため、一緒に麻酔中に行っておきたい処置はいろいろあるでしょう。
爪切り、マイクロチップ挿入、歯磨き、などなど・・。
その中でも獣医師として、とくに行ってあげたい処置は、「乳歯の抜歯」でしょう。
それは、なぜ?
乳歯が残っていると、歯石がつきやすい!
乳歯が残っているから食べにくいなどの不具合はありませんが、
永久歯の横に比較的細い乳歯が残っていると、歯と歯の間に隙間や溝が多くなり、その部分に食べ物が残りやすいのです。
そうすると、歯の間にとどまった食べ物のカスが歯垢(しこう)になり、数日そのままにすると歯石(しせき)になってしまいます。
ちなみに、人間のように虫歯のような、黒く穴があくような状態には犬は一般的にはなりません。
実際、病院に相談にくる犬の中でも、乳歯がしっかり抜けた歯よりも乳歯が残っている部分に歯石が多くついているケースは多いです。
乳歯ってどれ?
ということで、手術を計画している犬に乳歯が残っているのか、気になりますよね。
見てすぐにわからないことも多いですが、乳歯は一般的に永久歯よりも細く、とがっていたり、小さいものです。
とくに犬歯(けんし)や切歯(せっし)が乳歯残っている場合が多いです。
ちなみに、犬歯=八重歯、切歯=前歯みたいな部分です。
永久歯が生えてきているのに隣にまだ生えていたり、乳歯が残っていることで永久歯が出てくるのを邪魔していたりします。
乳歯の生え変わりは本当はいつ頃?
犬の乳歯から永久歯の生え変わりは一般的に、生後4ヶ月齢から始まり、6・7ヶ月齢終わるか、1歳くらいまで続きます。
しかし、成犬になっても乳歯が抜けない犬は多く存在します。
中型犬や大型犬は生え変わりがうまく終わることが多く、
小型犬は乳歯が残ってしまう犬が比較的多いように感じます。また、成長の度合いと同様に個体差があります。
生え変わるときは、違和感とかゆみで、かじる仕草が多くみられます。
かじっているクッションなどに少しくらい血がついていても大丈夫です。
抜けそうな乳歯は触るとぐらついてくるでしょう。
抜けた乳歯はポロッと床に落ちていたり、間違って食べて便に出てくることも。
間違って歯を食べても問題はありませんので、ご安心ください。
去勢手術を考える頃に、乳歯の生え変わりが終わる時期が重なるため、乳歯抜歯をともに行うかは迷う事柄でしょう。
乳歯抜歯は痛いのか?
人間の親知らずの抜歯などは痛みやその後の腫れがひどいイメージがありますよね?
犬の乳歯抜歯後は痛くありません!
私は犬ではないので想像ですが、抜歯した部分の腫れはほぼないですし、抜歯した翌日には出血もなく、フードを気にせず食べる犬が多い、ということで、痛みはほぼないと考えています。犬への負担は少ない処置です。
まとめ
乳歯が残っているのかどうかわからない方は獣医師に相談してみましょう。
その乳歯は抜けそうにないのか、抜けそうなのか一緒に相談して、去勢手術ともに抜歯可能なのか考えていきましょう。
将来、高齢になったときに残っている乳歯に歯石が多くつき、歯肉炎になり、結果、歯が抜けてしまったり、歯石の影響で歯の奥に膿が溜まる歯根膿瘍(しこんのうよう)になってしまうケースも多いので、若いうちから予防として、乳歯の抜歯は考えておきたいですね。